「シリーズ未見でもこれはわかる。傑作!」LOGAN ローガン あしたさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズ未見でもこれはわかる。傑作!
いやー凄かった。
Xメンシリーズは全然見たことない状態で、ただ評判が非常に良いのでまぁ見てみるかーと、事前に前作のあらすじだけウィキで流し見して見に行ったんだけど、全く問題なし。
一人の年老いた男が健康も自信も情熱もなくし、ただこれからどう死ぬかだけを考えながら惰性で生きている。
今まで大事だったものがなくなり、言うことを聞かなくなった身体と厄介な昔の置き土産だけが残っている。
それをどう消化するか。
それを序盤の10分くらい、淡々と仕事をするローガンの表情と所作で表現し物語に導く。
とても閉塞感が漂う世界。
これは私たちの物語だとすぐに気付く。
今まで信じていたもの、自由とか正義とか民主主義とかひとつの世界とか資本主義とか、そういったものに挫折して疲れてしまった私たちじゃないか、ローガンは。
前時代の夢、実現不可能だったことにどう落とし前を着けるかを疑似家族のロングドライブのロードムービーで描いていく。
SF映画の、しかもアメコミムービーなのに、特にCG感がなく敵との肉弾戦のアクションの激しさで興奮しながら観ていく。
いちいち戦闘シーンがスマートでありながら残酷なのがとても良い。
ローガンが戦っているところを一瞬だけ引いた画を挟むことでここに確かに彼がいると思うことができる。
そして人を殺すことの痛さをきちんと描いている。
それは映画の中の人を殺すことの責任の取り方に通じる誠実な描き方でもある。
ラスト、ミュータントたちはアメリカの国境を超えることを目指す。
そこにエデンはあるのか。
ここよりはましなのか。
新しい地獄が待っているのか。
優れた娯楽作品でありながら、とてもスマートで残酷で、なおかつ現状世界の批評でもある。
こんないい映画はなかなかないやね。
全人類必見かと!