「すべての音楽に偏見を持たなかった天才ベーシストにリスペクト」JACO Bluebeatbluesさんの映画レビュー(感想・評価)
すべての音楽に偏見を持たなかった天才ベーシストにリスペクト
天才ベーシストといえども、映画、それもドキュメンタリーとなると単館ロードショーになっちゃうのか、とブツクサ言いながら早起きしてして新宿シネマカリテに行って来ました。
昔JAZZマンと思しき初老の紳士、大学生のお嬢さん、メタリカなロック野郎、ベース担いだ男の子、ちょっと若づくりな中年夫婦... 早朝ロードショーにもかかわらず席は老若男女でほぼ埋まっていました。反省です。
本編は、デビューから若くして不慮の死に至るまでのジャコ・パストリアスを、当時のライヴ映像やホーム・ムービー、そして多くのミュージシャンへのインタビューを織り交ぜながら、ほぼ時系列に観せていきます。なかでもジョニ・ミッチェルとのセッション、インタビューは非常に興味深いものがありました。
彼の育ったフロリダ、当時は貧乏白人の住むスラムのある街だったと劇中でも言ってましたが、音楽的にはキューバ音楽や、そのルーツにあるアフリカン・ハート・ビート、JAZZ、R&Bなど様々な音楽が交錯し、それらが少年だったジャコ・パストリアスに多くの音楽的影響を与えたのではないかと思われます。まさにフュージョン。
すべての音楽に偏見を持たなかったジャコ・パストリアス。そのあまりにも「ピュア」で「スピリチュアル」な音楽に向き合う姿勢が自らをどんどん追い込んでいくわけですが、愛した音楽を求めて彷徨い歩く、死の間際の彼を見ていると純粋に泣けてきました。自らが愛した音楽に自ら殺されてしまったジャコ。
8mmフィルムだろうか、若き日のパストリアス一家の日常を写した映像が折々スクリーンに流れてくる。ベースを弾いている幸せ以外に、彼がいちばん幸せに見えたのは家族との団欒であり「彼の人生にはこんな時もあったのだ」と私には思え、それが唯一の救いでした。
無論、彼の音楽性が世界に驚きを与え、音楽の世界に革命をもたらしたのは言うまでもないのですが、彼の人生の終焉はあまりにも哀しすぎました。
あらためて、あらゆるミュージシャンを魅了しながらも、時代が追いつけなかった孤高の天才ベーシストに、合掌。
ジャコ・パストリアスを知らないひとにも見て欲しいと思いました。