サラエヴォの銃声

劇場公開日:

サラエヴォの銃声

解説

アカデミー外国語映画賞受賞作「ノー・マンズ・ランド」のダニス・タノビッチ監督による群像ドラマ。第1次世界大戦勃発のきっかけとなったサエラボ事件から100年が経った2014年6月28日。記念式典が行われる「ホテル・ヨーロッパ」には、戦争についてインタビューするジャーナリストや式典での演説の練習をするVIP、賃金未払いをめぐってストライキを企てる従業員ら、それぞれ事情を抱える様々な立場の人たちがいた。やがてホテル内に鳴り響いた1発の銃声をきっかけに、彼らの運命は大きく交錯していく。2016年ベルリン国際映画祭で銀熊賞・審査員グランプリと国際批評家連盟賞をダブル受賞した。

2016年製作/85分/フランス・ボスニア・ヘルツェゴビナ合作
原題または英題:Smrt u Sarajevu
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2017年3月25日

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(C) Margo Cinema, SCCA/pro.ba 2016

映画レビュー

4.0かの国の歴史に興味を持つきっかけに

2017年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

興奮

知的

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ。100年前に第一次世界大戦の引き金となった重大な事件が起こったことは世界史で習っていても、周辺諸国による占領・統治が繰り返され、民族的にも複雑なこの国についてよく知らないというのが私を含め大半ではないか。もちろん、歴史的民族的背景をある程度把握しておくほうがより理解できそうな台詞も多いが、知らなければ楽しめないというほどでもない。深刻なテーマを扱いながら、タノビッチ監督らしいユーモアもあり、ホテルでスリリングに進行する群像劇の面白さに引き込まれる。

監督はボスニア紛争を描いた「ノー・マンズ・ランド」をはじめ、常に社会的弱者や権力に翻弄される個人の側に立ってきた。民族対立、貧困、労働者の搾取といった問題はけっして遠い世界の話ではない。この映画を入口に、当地について調べたり、監督の過去作をさらに観賞してみるのもありだと思う。

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高森 郁哉

3.0奇才ダノヴィッチはこの地で何を訴えかけようとしたのか?

2017年3月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

1914年に発生したサラエボ事件は、第一次大戦が勃発した原因としても有名だ。しかし事の背景はあまりに複雑で、本作を紐解く前にある程度の概略を頭に入れて臨んだ方が良いかも。というのも、『ノー・マンズ・ランド』のダノヴィッチ監督が放つこの異色作は、まさにそのサラエボ事件から100周年目のメモリアル・デイに様々な研究家や論客がこの地に集って特別報道番組のインタビューを受ける中、その舞台となる高級ホテルでは賃金の不払いに不服を唱える従業員がストライキを企て・・・といった、一筋縄ではいかない内容が展開するからだ。この100年間、事あるごとに火薬がくすぶり続けてきたこの地の過去と現在が、ホテル内のあらゆる場所の対立として仄かに集約され、煙を立ち上らせていく。本作が伝えるのは、歴史がまだ終わってなどいないということなのか。それとも人類はこの諍いのメビウスの輪から逃れることなどできないのだろうか。見終わった後にズシリと重みが増していく作品だ。

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牛津厚信

3.0歴史問題と労使問題の密室劇

2018年9月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

舞台はサラエヴォのとあるホテル。この館内と屋上?だけで物語は完結しており、なおかつ劇中の経過時間も視聴時間も概ね同じ、つまりせいぜい数時間のホテル内の出来事をえがくというユニークな構成。
館内を移動する人物をカメラも追いかけるため、実際にホテルにいるような臨場感がある。

同じホテル内とはいえ、館内と屋上では別の話が並行して進み、ラストで両者は皮肉な交差をみせてエンドとなる。

サラエヴォは第1次世界大戦の発火点でありユーゴ紛争の中心地である訳だが、正直なところ、歴史パートは一般の日本人には到底消化できないレベル。朝廷、幕府、薩長土肥プラス地名・人名がわからない外国人が、幕末維新モノを観るようなものなので、充分な理解は諦めたほうがいい。

細部がわからないからなのか、この作品のメッセージがどんなものかもよくわからなかったのだが、わからないなりになにか思うことはあるかもしれない。自分の場合はこうだ。世界中の民族間の因縁など他者から見れば掃いて捨てるほどあり、とるに足りないが、自分、自国となると、やはりそうはいかないということだ。全世界がそうなのだ。理解できないことを理解する知性が必要なのだろう。とはいえ、崇高な民族的アイデンティティにまつわる不満も考え様で賃金未払いの不満と大差ない、そう主張しているようにも思われた。

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肉ネ~ム

4.0そして誰もいなくなった

2018年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエヴォ。
WW1のきっかけになったサラエボ事件に始まり、最悪の民族浄化を生んだボスニア・ヘルツェゴビナ紛争と負の歴史に苛まれた100年。
ドキュメンタリーっぽくそのあたりを喋らせる報道特番パートと市民の生活が厳しそうな今の現状をみせるホテルパートが上手く融合。
あまり知ることのない欧州のことを知ることが出来る社会派群像劇。

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