劇場公開日 2017年3月25日

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「奇才ダノヴィッチはこの地で何を訴えかけようとしたのか?」サラエヴォの銃声 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0奇才ダノヴィッチはこの地で何を訴えかけようとしたのか?

2017年3月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

1914年に発生したサラエボ事件は、第一次大戦が勃発した原因としても有名だ。しかし事の背景はあまりに複雑で、本作を紐解く前にある程度の概略を頭に入れて臨んだ方が良いかも。というのも、『ノー・マンズ・ランド』のダノヴィッチ監督が放つこの異色作は、まさにそのサラエボ事件から100周年目のメモリアル・デイに様々な研究家や論客がこの地に集って特別報道番組のインタビューを受ける中、その舞台となる高級ホテルでは賃金の不払いに不服を唱える従業員がストライキを企て・・・といった、一筋縄ではいかない内容が展開するからだ。この100年間、事あるごとに火薬がくすぶり続けてきたこの地の過去と現在が、ホテル内のあらゆる場所の対立として仄かに集約され、煙を立ち上らせていく。本作が伝えるのは、歴史がまだ終わってなどいないということなのか。それとも人類はこの諍いのメビウスの輪から逃れることなどできないのだろうか。見終わった後にズシリと重みが増していく作品だ。

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牛津厚信