劇場公開日 2018年2月24日

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「本当に、『さらばわが愛』の監督の作品なのか?」空海 KU-KAI 美しき王妃の謎 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5本当に、『さらばわが愛』の監督の作品なのか?

2021年6月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

単純

萌える

チェン・カイコー監督作品ということこそが幻術なのか?

なぜ、これを映画化しようと思ったのか…。

あの、『さらばわが愛』の監督が夢枕氏の幻想奇譚をどう映像化してくれるのか楽しみで鑑賞したのだけれど…。

原作未読。
 粗筋を映画化しましたか?と言いたいくらい、端折っているんだろうなあ。
 個々のエピソードをちゃんと描いてくれれば、奇想天外なミステリーファンタジーとなるだろうという片鱗は見て取れる。
 元々、原作は4巻の超大作とな。2時間強で収まる物語では無かろうに。

推理を端折りすぎて、人情がついてゆけない。

しかも、人物が描かれていないから、感情移入できずにつまらない。

ダメダメ尽くしの中でも、特に楊貴妃がダメ。
 人形?玄宗への想いや○○や○○への想いが感じられないのだもの。だから「切ない…」にならないし、○○もなぜ、あそこまで?って腑におちない。
 原作にはちゃんと描かれているんだろうな。
 せめて、レスリー・チャン氏位の演技力があれば。って、レスリー氏程の役者はそういないから無理か。
 せめて、ディービカー・パードゥコーンさんや西太后を演じられた時の田中裕子さん位の神々しさがあれば…。こちらも唯一無二の方々だから無理か。
 特に、インターナショナル版だと本当にただのお人形。傾国の美女のはずなのに、他の妓女と同レベル。否、妖艶さなら妓女や春琴の方が惑わされそうだ。
 吹き替え版だと、吉田さんの声によって、妓女じゃなくて”貴妃”らしさが出たけれど、でも、その”貴妃”らしさを活かす脚本でも演出でも演技でもない…。チャン・ロンロンさんの演技と吉田さんの演技が合っていなくて…。

染谷氏の動きはきれい。
ドタドタ走るシュアン氏に比べて、流れるように進む。相当訓練したのだろうな。
 でも、演出?ここでアルカイックスマイル?違和感を覚える表情が幾つもあって…。せっかくの熱演が台無し…。(監督と染谷氏のインタビュー記事を読むと、”穏やかさ”を表現したかったらしいが、何か企んでいる、馬鹿にしているように見える)

化け猫が一番の演技賞って、どういう演出?

まあ、それでも、ファンタジーのCGには酔った。
長安の街ごと作ってしまう、そのぜいたくさ。
陳家や遊郭、寺、まやかしの調度類のセンスもいい。
セットの遊郭に灯がともった時は”湯婆の宿”?を再現してくれたようで、心躍った。
極楽の宴は、万国博覧会、幻のオリンピック開会式のよう。
神々が、”湯婆の宿”に集うさまにも見えて…。
妓楼や饗宴での華やかな演出も楽しめる。
映画の中では意味不明の、玄宗と安禄山のセッションも、セッションとしてはいつまでも観ていたい。

う~ん、残念。

原作は、山口県に残る楊貴妃の伝承(by Wiki)とか、たくさんのことを調べて、練り上げた小説なのだろうけれど…。
企画が無理だった。
制作者には猛省を願いたい。

とみいじょん