劇場公開日 2018年2月24日

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「楊貴妃よ、それでいいのか?」空海 KU-KAI 美しき王妃の謎 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5楊貴妃よ、それでいいのか?

2021年6月14日
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鑑賞方法:VOD

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※長文を投入します。ご注意ください!

公開当時から少し気になっていた、夢枕獏原作でチェン・カイコー監督の日中合作。
ビジュアルからも伝わってくる大作感の割に評価が低いので、確かめてみることに。
ちなみにインターナショナル版です。
結論としては、
めちゃくちゃ面白かったです。僕は。
ただ、低評価の理由もなんとなくわかります。
ということで、まずはあらすじ。

唐の時代、遣唐使として中国に渡った日本(倭国)の天才僧侶空海。
当時、都の長安では権力者たちの不審死が続いていた。
空海は詩人の白楽天とともにその謎を追うと、そこには30年前に非業の死を遂げ、時の皇帝玄宗の妃であり絶世の美女の楊貴妃が深く関わっていたことを知る。
当時同じく入唐(にっとう)した倭人、阿倍仲麻呂や「詩仙」と呼ばれた詩人、李白を巻き込んで、楊貴妃の死の真相と空海の目の前で起きる怪事件の真相が明らかになる、エログロ完全ファンタジー歴史ミステリー。

といったところでしょうか。
自分の話になってしまいますが、少し世界史をかじった人間なので、そんな私からするととてもワクワクする興味深い物語でした。
当時の幻術的なものがモロに絡んでくるので、完全ファンタジーとしっかり割り切れないとなかなかきついかと。
多分、ハマらなかったつまらなかった方はこの2点が原因なんだと思います。
①当時の中国史分からないと楽しめない。
実際私も、公開当時は映画にも中国史にも興味はなく、空海と阿倍仲麻呂と楊貴妃の名前くらいしか分からなかったもんです(ただ、ファンでもないのに何故かたまたまRADWIMPSの主題歌は聴いてました)。
歴史的背景わからなかったら、確かにつまらんです。
中国ではメジャーな歴史だろうから、日中で評価は変わりそうですね(勝手に、日本で言うところの忠臣蔵くらいポピュラーなんじゃないかと思っています。知らんけど)。
②ファンタジーついていけないと観てられない。
普段現実的なストーリーに慣れてしまっているのもあってか、これほどまでのファンタジーな世界観の映画はある意味新鮮でした。
史実が元ネタなので、現実的に考えちゃいがちになるのもしょうがないと思います。
あと黒猫ちゃん映画ですが、魔女宅キキに憧れてジジを飼い始めた人と、クロネコヤマトで働いてる人にはお勧めできません(完全な偏見)。

ってわけでこの映画、ある程度の唐の歴史を分かってるとめちゃくちゃ面白いんです!(←何回目?)
ファンタジー要素強めともあって、実際どうだったかは分かりませんが、ちょいちょい確かにそれは有り得そうだなと言うところもあって感心。
世界史より日本史、中国史より東南アジア史モンゴル史みたいな感じだったのですが、これを機にまた少し興味が湧きました。
特に唐の時代は面白いですね。

少しだけツッコミを。
・阿倍仲麻呂ってあんなに玄宗や楊貴妃に近づけるくらいの位(ダジャレじゃないですよ、いやダジャレです)だったことに驚き。
でも、流石に「楊貴妃殺害現場にいた」はやりすぎじゃない。
安史の乱で逃げてるでしょ。
・“阿倍”仲麻呂を“阿部”寛がやると言うw
阿部ちゃんだとどうしても笑っちゃう。
今回はちゃんと日本人ですよ。
・安禄山が思いの外可愛かった。
とても挙兵するとは思えないのだが…まあ、それもよし。
・比翼の鳥、連理の枝となるはずの玄宗&楊貴妃カップルを無理矢理引き剥がし、幻術兄弟と縁結びという堂々とした史実改ざん…悪くないだろう
・遣唐使船に女性が乗っているのが少し引っかかる。
しかも子供連れてる⁉︎
YOUは何しに長安へ?
・最終的に楊貴妃が話のメインになってしまい、なんのために空海が唐の国に来たのか分からなくなっていた。
最後の「密教とは楊貴妃」とかいう、真言宗から訴えられそうなほど超雑なまとめ方のおかげで思い出しましたよ。
・エンドクレジットのVFX系の日本人率の高さ。
日中共に良いキャスティングでした。
中国語ネイティブとの違いが、初心者にはわからないくらいの日本人キャストの中国語、上手かったです。

バリバリCGだなと思うところもありましたが、豪華絢爛な世界観があるので、観ていて全然飽きませんでした。
多々見られる欠点っぽい部分も勢いで押し通されてしまう。
マイフェイバリットムービーです。

唐揚げ