「北と南は鏡のように。」The NET 網に囚われた男 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
北と南は鏡のように。
キムギドク監督作には人物が、設定も描写も役者さんもすごすぎる。
この映画では、北朝鮮でも便宜的に祖国と党に忠誠を誓いそこに嘘偽りはないが普通の市民として家族と安寧に暮らすことを人生の第一義としている男が思う存分に描かれており、このような洗脳されてるわけでもなく市井に暮らしている人がたくさんいるはず。テレビのニュースなどで、センセーショナルに編集された北朝鮮を見て、人々はどのように食べているのか暮らしているのか、と不思議に思うがこういうことなのだ、と思う。このチョルさんという漁師は軍隊経験もあり力も強いが、スパイとかでもなく、家族への愛とか普通のレベルでの国に対する忠誠、愛国心があり、それも家族と生活を守るためであり貧しくも非常にささやかながら幸福の中に生きている。国境の川で魚を採り暮らしている。暮らしは楽ではないから商売道具の船は命と同じ大切さで、そのはため船を捨てられず韓国に流れ着いてしまう。その後の流れは思っていたのとだいぶ違い、ほんとに紆余曲折ありながら、北朝鮮に帰ってしまうのだ。南の資本主義の網には引っ掛からなかったんだな。そこが意外であり、同志ジヌさんの細やかな警護、南でも国家保安のところは自由主義ではなく、北とほぼ鏡の裏表に主観的でバイアスがかかった人たちと、他の映画や本でもよく見るのでそうなんだろう、内実は共産主義とか将軍様とかいうかいわないかの差でそこには先進的な人権意識もあまりなかった、、でも時代がすすみ、世代的な考えも変わり、これが硬直した北と変わる南という違いが出るところでその象徴がジヌさんでありジヌさんの話にも耳を傾ける署長?であろう、、、結局個人としての彼、自分の人生に信念を持ち家庭人として生きる責任を持つ彼をそのように北も南も扱う事をせず、それぞれの国家主義的事情で尋問され書かされストーリーを作られ裏切られる。北と南でミラールームのように全く同じ取り調べが行われるのが面白い。それぞれの言い分があり、それに翻弄されただけ。
女性同志は無表情で、悲しいことがあるたびに泣かねばならないかと問う。いちいち悲しみに泣いたりはしないのだ、そのように訓練もされているのしおそらくそこに至る前に悲しみ苦しみは溢れてもう涙は残ってない。明洞の物量、繁栄、に眼を奪われ反応するのではなく、捨てられるごみや捨てられたような人生を懸命に生きる人をみる。
とっ散らかってしまったが、心に残ったし勉強になった。
とにかく価値観ということを考えさせられた、軸となるものがあれば価値観も思想も陣営も関係なく軸があっだゆえに本当に悲しい結末となってしまった男の話。
それにしても今2021年、コロナ禍で、画面に映る懐かしいソウル明洞の街。