「人の醜さを噛み締める。」The NET 網に囚われた男 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
人の醜さを噛み締める。
2017年はアジア映画を頑張ってみよう年なので。単純なマイブームです。
キムギドクはずっと名前知ってましたが、バイオレンスが厳しそうで避けていました。この映画はそんなにバイオレンスきつくなさそうと思ってチャレンジしました。
以下乱暴なあらすじ(ネタバレ)と感想です。
北朝鮮の素朴な漁師チョルは、起き抜けに可愛い妻を抱いてから、いつものように漁に出ます。しかしボートのエンジン故障で国境を超えてしまい、韓国に身柄を確保されます。そして、独裁国家に洗脳されたかわいそうな漁師を救うという名目で亡命を強いられます。亡命を強いられつつ、スパイ容疑もかけられて拷問を受け、豊かさをチラつかせられたり、若い警護役のジヌとちょっと心を通じあわせたり、本物のスパイから頼まれごとをしたり、風俗嬢ともちょっと交流します。でもチョルは家族に元に帰りたいだけなので、必死で耐えて耐えて耐えて、帰国できることになりますが、帰国した後はまた北朝鮮で拷問を受けます。ジヌが持たせてくれたドルを北朝鮮の拷問担当たちがチョルから奪い、そのことを黙っている条件で家についに帰えれます。
しかしチョルはすでに心を砕かれてしまい、事件前には楽しそうに抱いた妻からの誘いも愛撫にも反応しなくなってしまいました。すすり泣く妻と空を見つめるチョル。
それでもチョルは漁に出ます。生きていくために。しかし警護兵に漁は認められないと言われ、もう我慢できっか!と振り切って漁に出ます。そしてチョルは射殺されてしまいます。
本当に遣る瀬無い話でした。
なんで?なんで?こんなにひどいことがなぜできるの?そう心で叫びながら観ました。
そんな観客の気持ちは、若いジヌの苦悩と重なります。
とにかくチョルをスパイに仕立て上げたい取調官の非道さにムカムカしました。
チョルの反撃が本当にスカッとしましたよ。
人間ってなんてダメなんだろうと、なんて醜いのかと、自分も含めて情けなくなりました。
もちろん美しさも素晴らしさも噛み締めてきたけれど、同じくらい醜いと実感しました。
今まで深く考えたことのなかったことに、リアリティを与えてくれる物語でした。
特に北朝鮮に暮らす庶民の考えを初めて垣間見れたことがよかったです。
裕福ではないけど、素朴でとても幸せそうでした。
もちろんチョルがそうだっていうだけで、みんなそうじゃないとわかってます。でも、個別の人間を、物語としてじっくり観察することで、その気持ちを想像することで、生きた隣人として感じられることが、どんなことにも必要だから。その機会を持ててよかったです。
チョルの娘が可愛かったですが、チョルが撃たれた後のことを思うと…
うんこからドルを取り出し、そのドルを取調官が表情変えずに奪い取るシーンで、ちょ!まって!臭くないん??って思って笑えました。他にもちょいちょい笑えるところがありました。