「愛する人がいてこそ」オリ・マキの人生で最も幸せな日 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
愛する人がいてこそ
モノクロの16ミリフィルムで撮影されたフィンランドのロマンティック映画。フィンランドと言うとアキ・カウリスマキを真っ先に思い出すが、この映画にもカウリスマキ作品にもあるような独特のペーソスが感じられる。これはフィンランドという国に特有なものなのかもしれない。会話のテンポ感などが、他の国と異なるというか、どこかゆったりしている。荻上直子の「かもめ食堂」などもそうだったし、フィンランド独特の時間感覚なのかもしれない。
国の威信をかけたボクシングのタイトルマッチに挑む男が、ありふれた女性に恋に落ち、気になって減量に集中できなくなってしまう。周囲の期待をよそに恋人に会いに行ったりしてしまい、迷惑をかけたりしながら、試合当日を迎えることになる。
世界大会という大きな舞台を前にしているとは思えない、どこかとぼけた味わいが映画全編を覆っている。プロの真剣勝負の緊張感よりも、愛する女性とのほっこりする時間に重きが置かれているのも特徴的で、見終わったあとはなんだか肩の力がいい感じに抜ける作品だ。
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