武曲 MUKOKUのレビュー・感想・評価
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酩酊する演技の難しさよ
前回の河瀬直美監督の「光」に続いて
「喪失からの再生」をテーマにした本作。
「怒り」で見事に
ゲイの役を演じていた綾野剛が
どういったカメレオンぶりを発揮するのか。
楽しみにしていたのだが。
うーん。頑張っていたと思うが
新たな綾野剛を発見!とまではいかなかった
「悲しい過去→酒→自暴自棄」の
不幸スパイラルはこの手の映画では
いわば、ありがちな設定。
となるとその挫折っぷりが
どれだけ共感を呼べるかに尽きるのだが。
つくづく「酩酊する演技の難しさ」を感じた。
そこが白々しいと人生の喪失に
説得力がなくなるから。
前田のあっちゃん。
シーンが少ない割に爪痕は残せてたかな。
なかなかの汚れ役。でもやっぱりまだ、
「元AKB」という定冠詞がつく。
柄本明。さすがの柄本明。
年とともにしゃがれてきたあの声がいい。
志村けんとコントをやってたかと思えが
深みのある渋い演技もできる。
貴重な役者さんだなと思った。
小林薫。かっこいいです。
いい俳優さんなのに。
ダメな父親になっていくまでの
見せ方が弱かったかな。
これは演出の塩梅。
今回の映画の一番の「めっけもん」は
村上虹郎。
ほとんど知らなかったが
UAの息子さんやねんね。
みずみずしい演技というか
ほとばしる演技というか。
それが主人公と合致して
妙に説得力があった。
昔見た「GO」で初めて
窪塚洋介を見つけた時と
同じような感覚。
なんか「惜しい」映画だった。
緊迫感あふれる再生物語
酒におぼれ自堕落な日々を送る矢田部(綾野剛)。まるでシャブ中のようなナリだ。それは、わが手で父を植物状態にした責めによる後悔の果てかと思っていた。だが、実はそこには、父に対する感情を把握しきれない葛藤があった。「憎しみ」なのか「好き」だったのか。劇中、それを光邑(柄本明)に指摘されて思い悩む矢田部に、心を乱された。それまでただのクズにしか見えなかった矢田部が、自分の運命に悩み苦しむか弱き一人の男に見えだしてきたからだ。
そこに、まっすぐな若者羽田が現れて(と言っても光邑の仕掛けなのだが)矢田部の迷う心を激しく叩く。ふたりの丁々発止に息をのむ。剣道の対決シーンの切れ味がすごい。
ラスト、別人かと思わせる綾野剛の演じ分けに感服。そして、父の思いを知った矢田部の涙に、思わずもらい泣きをした。
結局、すべて先まで読み切っていた光邑のシナリオ通りだったというわけだが、そんな坊さんを柄本明は見事に演じていた。
村上虹郎も見るたびよくなっていく。なぜか目が離せない雰囲気がある。
原作は未読だが、天才的剣道センスを持ち合わせた羽田がラッパーだという設定に、はじめ違和感があった。しかし、運動神経やリズム感、言葉を感じる感性など、なるほど、心技体を体現する剣道という競技にもってこいだわ、と唸った。
勝敗や生死を超えた境地へ
綾野剛の酒浸りのダメ人間の演技が良かった。村上虹郎もほとばしる若さとエネルギーを見事に画面に焼き付けている。両者とも剣道経験者だからだろうか、二人の果し合いは緊張感あるカットの連続。勝敗や生死を超え、鑑賞後は爽やかな気持ちになった。良作。
剣
昔、白黒映像の時代、市川雷三の剣を思い出します。剣道世界選手権の日本と韓国の団体戦決勝、栄花選手の突きがベースにあるとの事、鎌倉の歴史感と剣の教えが融合し見事に表現されていた。柄本さんの立ち振舞いと防具の着装は素晴らしい。
まさかの予想通りの最後
綾野剛の演技を凄いと捉えるか過剰と捉えるか、かなり難しいところ。
設定や筋などには大いに興味を覚えるけれど、絵とか演技が好きになれない。
前半は手持ちのカメラで過剰に駄目人間を捉えて、後半はそれを全く真逆にしているという意図は分かるけれど、それが果たして絵づくりに反映されているのか懐疑的。前後半の差を演技では明示できても、絵そのものでは表現できていなかったと感じた。
照明においても、工夫しているという意志は感じるけれど、表現としてはどうなのだろうという場面が散見された。
音の表現においても工夫というか気配りを感じた。題名に関連した語が含まれているだけあって、こだわり抜いたであろう音の表現には共感した。
全体的にレトロな印象。個人的な好みでいうと、嫌いな古臭さであったわけで、なかなか感情を投影させて見ることができなかった。後半に向かうほどに展開が読めて、終わりのカットはほぼ想像できた。想像できても、重要で最も拘らなければならないところ。しかし…
正直、あまりいい映画には感じなかったけれど、綾野剛には心からお疲れさまと言いたい。
ここまでとは・・・
予告編を観た時に「傑作」の匂いがした。
だから観る前からハードルが凄い上がっていた。
しかしそのハードルを更に飛び越えていた!
まさかここまでの傑作とは・・・!
魂を揺さぶる!程の大傑作でした!
特に嵐の中の決闘シーンは秀逸!
日本実写映画で、こんなに良かった!と思ったのは
「桐島、部活やめるってよ」以来。
綾野剛、この人、作品毎にドンドン良い役者になっていく・・・
今回の演技、ヤバい!憑りつかれている域に達している!
素晴らしい!もっと評価されるべき!
村上虹郎、この人、この作品で初めてみました。
凄くイイ!若手の中では群を抜いていると思う。
これからの彼にも期待!
しかしこんな近年稀に見る大傑作なのに、
ランキング10位以内にも入っていないなんて・・・
最近の日本映画は少女漫画の実写化が多く、
こういう作品はどれも主人公の女の子を、
イケメン君達が奪い合う、
という見分けも付かないものばかり
勿論、こういう作品も映画界には必要なんですが、
その比率が問題。
この「武曲 MUKOKU」のような良い作品が
ランキング10位以内に入るようになるには
日本の観客(観る側)が、もっと成長しなければならないと思う。
とにかくもっと多くの方に、この大傑作を観てもらいたいです!
リアリティ版少年漫画
参考に調べてみたら原作が藤沢周平かと勘違いしていた(汗) 全然関係無いらしいとのことなので、だからなのか、映画でもそれ程深みが感じられなかった。もう少し劇的で、少々スプラッターな場面もあっても良いと思うのだが。あくまでもリアリティに拘るのか、その割りには、酒2升吞んでもあれ位の千鳥足で済むのか、事務所NG なのは分かるが、あっちゃんの濡れ場移行は、引きのカメラアングルでサービス感は薄く、パンツ投げる位が関の山。はっきり言ってしまえば、綾野剛のプロモーションビデオに始終してしまってる体裁になっているのが、どうにももどかしい限りだ。折角の村上虹朗登用も、その必然性が感じられず、それでも、なんとかその気が触れたような目力だけは爪痕を残す演技として目立った位。勿論、脇を固める江本明、風吹ジュン、小林薫等の演技力は安定ではあるが、かといってそれ程の情感の訴えは響かなかったのは、自分の心が荒んでいるせいか?(苦笑)
決して悪いストーリー展開ではないのだろうが、何となくそのディテールの詰め方がリアリティに詰めがちなのに、でも、ユルい演出にチグハグさを感じた作品であった。勿体ないのである。
結論:アルコール中毒患者が迷惑かけながら立ち直る話という単純な話です
ひりひり
アッちゃんのパンティのシーン以外、一切妥協なく張り詰めた2時間。時にはリアリズム、時には幻想的に男の苦悩と再生を描く。二人の男の真剣勝負(木刀と演技)は必見。村上のストイックな色気、綾野の鬼気迫るアル中演技。美しいロケーションと魂を削るような演出、渾身の編集で魅せられた。
くっきりとぼやかし
綾野剛
綾野剛
綾野剛
狂ってる綾野剛、みれます
こんなもんなような
少しやんちゃのような
村上虹郎、みれます
目が良い
濃いんだよな〜お二方とも
爆音がなって
竹刀が飛んできそうで
あ、みてて、ん?と思ったけど
やっぱりエンドロールみてスッキリ
「あら恋」良いんだよなあ
映画が本当に好きな人に
テレビサイズで観るんじゃなく映画館で観たい作品です。
ラストの二人の闘いは、すぐ横で見守っている気持ちになりました。呼吸するのも忘れるくらい。
本当に映画が好きな人たちが集まって作った作品だな、と。出ている人もスタッフも。
そういう意味で本当に贅沢な作品。
もっとたくさんの人に観てもらいたいですね。
アクションもすごいし
綾野剛さんのアルコール依存の演技は凄絶。『そこのみにて光輝く』もそうだが、自分が人を死に(近い状態に)至らしめたことが、どれほど精神をさいなむのか、恐ろしいほどに伝わる。
父と子の相克はすさまじかった。県警の凄腕剣士が我が子に「殺人刀(せつにんとう)」を仕込む姿は異様で、幼い研吾役の子がけなげで痛々しかった。無慈悲な父もまた、そのように仕込まれ、恨みとともに剣道を続けて来たのか。
光邑和尚曰く、研吾もその父も同じく「弱い」「逃げている」。稽古を重ねても、おのれの弱さがなくなるわけではないということか。自分の闇を見つめる狂気を演じたら綾野剛さんの右に出る者はいないと思う。
研吾が剣道の心得のような文章をつぶやく場面があった。精神の鍛錬とか国家の平和とか、剣道を学ぶ効用の副次的な産物ではあるかもしれないが、剣道の目的はたぶん違う。これはスポーツではないようだ。
「剣道は競技だ」と部活の生徒は言い、「殺し合いでしょ?」と融は言った。剣道はもとをたどれば人を殺す術であり、今の世にあっても、生きている実感を生と死のせめぎあいに求める若者がいるということ。
村上虹郎さんも見事だった。実は剣道初段とのこと、いっそ初心者のふりをせず、腕前を見せてもらったほうが、「殺人刀」の使い手である研吾の父と二重写しになる必然性が増したのではないか。他の方も書いておられるように、矢田部研吾が素人の高校生と本気で勝負をするという設定に、どうも入り込めない。
それ以外は、柄本明さんや小林薫さんの達人ぶりに見惚れたし、鎌倉の風景が人間くさく魅力的に見え、ホームレスのおじさんや女性たちもいい味を出していると思った。
アル中の研吾が剣道部員をなぎ倒して竹刀を折る場面とか、立ち直る過程で仏前で素振りをするのはどうかと思ったが、二人が最後の勝負で防具をつける所作は美しく、剣道と禅について興味を持った。
嬉しい誤算
76本目。
時代劇を現代に置き変えた?
藤沢周?周平ではないけど、確かこの人も時代劇書いてた様な気が・・・。
でも面白かったなぁ。
こういうのは嬉しい誤算。
それに柄本明。
存在だけで成立しちゃうから、スゴい。
役者としての完成形って感じがする。
あとは、前田敦子。
好きとか嫌いではなく、2シーン位しかでないなら、別に前田敦子じゃなくても・・・。
後述
書き終えて調べたら、ディアスポリスの監督か!
納得。
なーんか雰囲気似てると思ったし、同い年か。
日本を代表する監督になって欲しい。
「剣禅一致」という言葉が浮かんだ
剣禅一致とは沢庵和尚の「不動智神妙録」にある語で、剣道の究極の境地は禅の無念無想の境地と同じであるということ。
荒れ狂う感情に翻弄される主人公に、果たして「無心」で剣を握ろうと向き合える日がくるのか、固唾をのんで見守りました。
主演の綾野剛さんの演技がすさまじい。
アルコール中毒ゆえの破壊的な行動、幻覚を見て暴れたり、焦点を失った鬼気迫る表情は圧巻。
羽田役の村上虹郎くんも大健闘。
豪雨の中の対決シーンは見応えありました。
ただ原作を読んだ時にも感じたのですが、剣道初心者の高校生相手というのに納得がいかない。
洪水で死にかけたというトラウマを背負い、また秘めた才能の持ち主とはいえ、「心技体」すべての面においてこの主人公を受け止めるには物足り存在に思えてしまう。
なぜ彼だったのか、映画化に際して独自な設定を追加したら、もっと説得力が増したかもしれません。
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