「誰かと生きることが人生の醍醐味かも。」君の膵臓をたべたい(2017) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
誰かと生きることが人生の醍醐味かも。
"日曜プライム" で鑑賞(録画)。
原作は既読。
映画公開前に原作を読み、観に行きたかったものの叶わなかったので、今回の放送を大変楽しみにしていました。
難病物の変化球を狙った小説かなと思っていましたが、読了後にはそんな偏見をものの見事に粉砕してくれました。
期待を凌駕する、瑞々しい感動を与えてくれました。不気味なタイトルと内容のギャップも去ることながら、そこに籠められた深いメッセージに涙が止まりませんでした。
桜良を体現した浜辺美波の透明感にやられました。天真爛漫で、主人公を振り回す様がとてもキュート。浮世離れしていると云うか、神秘的な雰囲気をまとっていて、天使みたいに主人公たちを導いてくれているようでした。
主人公の成長も感動的。他者との繋がりを絶って生きようとする彼が、桜良を思い遣るようになり、心に他者を受け入れるスペースが出来上がっていく様を北村匠海が繊細に演じていました。桜良のために流した涙が尊い。
原作には無い大人パートは、若手の出演者だけではヒットしないだろうと考えた興行側の力学が働いて挿入されたのだろうと勘繰りたくなりましたが、観ている内にそう云うことだけでは無く、ちゃんとした意味があったんだなと思いました。
死してなお彼らの心の中に生き続ける桜良は、それが元々彼女の理想とする人生の結末であり、誰かと関わらないと生きていけない人間の象徴だな、と…。大人パートがあることで、その側面が原作よりも強調されていたような気がしました。
運命の残酷さも描かれていました。
「神はサイコロを振らない」とはこう云うことか、と…。桜良のような運命を背負わされたとしても、自分の思うがままに生きていくことが出来るかどうかは全くの未知数。
1分先の未来に自分がどうなっているのかは誰にも分かりません。生き抜くことよりも、それまでどう生きたかが人生の結末を迎えた時に重要になって来るのかも。
桜良は病と向き合う中で自分の生き方や考え方を客観的に見つめ直し、人生のあるべき姿を発見したのかもしれません。
自分に欠けているものを持っている主人公に憧れを抱き、彼の方も自分には無いものを持っている彼女に惹かれていく。
桜良のひたむきな生き方が、彼女が死してなおずっと、彼らの人生の中に残り続けている。これこそが人間のあるべき姿であり、理想ではないのかなと思いました。
誰かが想い続ける限り、その人は永遠に生き続ける。
究極的な他者との関わりを描いた素敵な作品でした。
[以降の鑑賞記録]
2020/09/04:金曜ロードSHOW!
※修正(2024/03/15)