オン・ザ・ミルキー・ロードのレビュー・感想・評価
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3つとは、昔戦争があった事、戦争が終わった事、蛇がミルクを飲む事
かつて戦争があった事、戦争が終わった事、蛇がミルクを飲む事 3つの真実なんじゃ無いかなあ。
花崗岩で草原を埋め尽くす。かつての争いと彼女への鎮魂の意を込めて、その光景は岩の凹みにこぼれ落ちた白い液体のようだ。
彼の仕事はミルクを配る事。
傘をさしてロバで移動する姿とひつじ達の惨劇は『エル・トポ』のようだ。麦の草原はアッバス・キアロスタミのようだ。ロバはロベール・ブレッソン監督作品の『バルタザールどこへ行く』をリスペクトしている。
全編流れるノリの良い音楽が最後に哀愁を帯びた短調で締めくられる。
僕は傑作だと思う。
追記 『あれば大鷹?いやいやはやぶささぁ。』『まぁ、どちらも似ている同じ猛禽類さ』と言った主旨の会話が出て来る。最初彼に恋する女性と、彼が恋する女性の区別がつかなかった。そんな事言いたいのかなぁ?
「3つの実話と寓話を散りばめた」とテロップが流れるものの、どこまでが実話なのかなんて結局わからなかった(汗)。
父親が斬首され、頭がおかしくなったと言われていたミルク配達人のコスタ(クストリッツァ)は黒い傘を差し、ロバに跨り、戦場を往復する。元は音楽教師でツィンバロムという鍵盤打楽器を演奏するのだが、この音楽がとても良かった。休戦を喜び、一時の宴会を楽しむ村人たちの間では元は新体操選手だったミレナが人気者。そのミレナはコスタに処女を奪われたと思い込んで一途に恋しているといった設定だ。ミレナはまた、パルチザンの英雄でもある兄ジャガのために難民区域から花嫁(モニカ・ベルッチ)を拉致させるのだった。
戦争を楽しんでるともとれる村人たち。鶏、ガチョウ、ヤギ、ハヤブサ、蛇、と動物の存在が映画の雰囲気を彩り、序盤には壊れた大時計が印象的。戦争そのものが日常の喧噪の象徴なのか、終戦を迎えたときにはコスタの心の中でも恋愛が大きくなったくる。普通ならば若いスロボダ・ミチャロビッチ演ずるミレナを選ぶだろうに、耳モゲを治してくれたことをきっかけに、危険な女モニカ・ベルッチに惚れてしまうコスタ。戦争は終わったはずなのに、その花嫁を奪還するために多国籍軍の精鋭部隊がやってきて、村人たちを虐殺してしまう。
後半はその3人の精鋭部隊からコスタと花嫁の逃避行が描かれていて、雑然としていたコメディタッチの村から一変、大自然の中の冒険となる。虐殺シーンはシリアスながらも、コスタの妄想みたいに感じられるし、すべてが愛のために霞んで見えてしまうほど。山岳地帯のヤギの群れの場面はシリアスで、いまだ地雷が残っている危険地帯でもあり、そこで花嫁も亡くしてしまう。
ラストには地雷現場を石をもって埋め尽くす俯瞰図。まるで花嫁に天国から見守られてるかのように、コスタの深い愛を感じるところ。蛇やハヤブサにも守られてはいたけど、自然が常にコスタの運命を操っていたのかな~とも感じました。
【2017年11月映画館にて】
ちょっと悲しい
二人は敵兵から逃れて羊の群れに紛れて逃げ切ろうとするが、妻は地雷て亡くなってしまう。破れかぶれで自分も死のうとするが、牧羊の男から引き止められる。15年後、妻の亡くなった地雷原に石を敷き詰める日課を送るようになっていた。
アブダビの免税店
戦争、結婚式、バルカン音楽、気狂い女、夜の嵐、水中撮影、アヒル、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ。いつもながらのクストリッツァのモチーフが繰り返され、待ってました!という気分。
ロバに跨り蝙蝠傘をさして肩にタカを乗せたクストリッツァ(本人)格好いい!
ミルクまみれになりながら草原を駆けてくるモニカベルッチかわいい!エロい!
今回、戦争描写が際立って凄まじく、特に多国籍軍の登場により、それまでチャップリンの「担へ銃」みたいにどこかほのぼのしていたセルビア軍の前線の村はあっさり壊滅、浄化され、美しい山間に黒煙が上がり全てが巨大な火炎放射器で完璧に焼き尽くされ、観るものを戦慄させます。
その後も桃源郷のような土地が次々と殺戮の焦土と化し、不条理感に体力を奪われながらも、監督独特のユーモアで前に進むことができるというかなんというか、戦災など大きな悲劇に見舞われると人は感覚が麻痺すると言いますが、クストリッツァの映画はまさにその麻痺の追体験。
不条理といえば2人の追われる理由が、そんな理由で?って内容なんですが、これもまた戦争の不条理を皮肉っているのでしょう。
ストーリーの大筋としては悲劇に次ぐ悲劇でしかない、のに悲憤慷慨とはならなくて、ワハー、クストリッツァ観た!という変な高揚感だけが残ります。最高。
まあまあだった
騒々しい感じはよかったのだが、全体的に輪郭がぼやけている印象があり、興奮も感動もスリルもあまり感じなかった。登場人物にあまり魅力を感じることができず、後半の逃避行はだらだらしていて眠くなってしまった。
ひつじがぁ〜‼︎
戦争と言う重いお題なのに
なんかコミカル
大笑いじゃないけど
度々
クスって笑っちゃいました。
モニカベルッチは
結構なお年なのに
変わらず美人でした。
地雷のシーン
蛇さんも助けてくれてたのに
生きてて欲しかったなぁ
妹役の女優さんも
かなりの美人だと思います。
逆立ちで焦げてたの
可哀想だった…
そして
ひつじ達がぁ〜‼︎
すごい映画です!
涙が止まらなかった。残酷で重くて、もう二度と観たくない‼️と思いながらも、ついまた観に行くクストリッツァ映画。
コミカルで可愛いらしくて愛おしく、生命力に溢れている。だけど、生き物はとても儚い。無力。
内戦の銃弾の中、狂うほどのパワフルな明るさ。だんだん度を越してくる。そしてだんだん背景に巻き込まれ、異常な明るさが苦しい。
戦争の無意味さ、人を狂わせ、無力で愛おしい生き物を無残にあっけなく殺してしまう事実を知っているからこそ描き続けるんだろう。
「スプリッツァで乾杯を」や「アンダーグラウンド」…監督のブレないポリシーを感じる。
個人的にはミキ・マノイロヴィッチは好きな俳優なので嬉しかったけど、兄⁉︎もうおじいちゃんみたいじゃん。と思ってしまった。
若い俳優に世代交代すれば良いのにと思いながら観てたけど、どうしてもやりたかったんだろうと思うと、また涙が出てきた。
羊の群れから15年後の最後のシーン、涙が止まらなかった。映画館出るとき困った。
好き嫌いは確実に分かれる
エミール・クストリッツァ監督の作品を観るのは『パパは出張中!』『アンダーグラウンド』に続いて3作品目になる。
『パパは出張中!』は映画の内容は正直それほど覚えていないが、テレビ東京で放映されていた『山田孝之のカンヌ映画祭』のフジファブリックが歌う主題歌『カンヌ映画祭』で繰り返し出てくるフレーズの1つとしてタイトルだけは良く覚えている。
(『カンヌ映画祭』はカンヌ受賞作品のタイトルで歌詞が構成されている)
『アンダーグラウンド』は特典映像も含めて観たが、ユーゴスラビアの歴史をファンタジーに落とし込んだ作品だった記憶があり、観ている最中から好き嫌いは完全に分かれる作品だなと感じた。
この作品でセルビアの肩を持ったとしてクストリッツァは引退宣言まで出す羽目に陥ったらしいが、そもそも彼はセルビア人なのでセルビアの肩を持ったとしても当たり前ではないだろうか。
そもそもセルビアは民族もロシアと同じスラブ系、宗教もローマ・カトリックではなく東方正教会であるがゆえに苦難の歴史を歩んできた。
セルビア人は勇敢で戦争も強かったためにイスラム教徒のオスマン・トルコがセルビアを占領した際にわざと首都のコソボにイスラム教徒のアルバニア人を住まわせた。
また第二次大戦中はナチスの威を借りたゲルマン系のクロアチアに相当住民を虐殺されている。
戦後はティトーによって社会主義独裁体制のユーゴスラビアの一部に組み込まれ、やはりコソボへのイスラム教徒の移民を奨励する政策を取られてしまう。
ティトー死後にセルビア人は不法占拠中のアルバニア人退去の正当性と、クロアチア人の非道さを国際社会に訴えたのだが、クロアチアと同じローマ・カトリック諸国の憎悪を買い、いかにセルビアが残忍かを欧米各国で世論形成され、最終的にはNATOによってセルビアの首都ベオグラードを爆撃され民間人を多数虐殺されている。
なおイスラム勢力であるオスマン・トルコ軍のヨーロッパへの侵攻を食い止めるために見せしめとしてトルコ兵士2000人を生きたまま串刺しにしたブラド公は本来ならヨーロッパ世界では英雄なはずだが、やはりローマ・カトリックではないため後世に吸血鬼「ドラキュラ」にされた。
最近話題のミャンマーのロヒンギャ問題もいっしょである。
元々単一民族しかいなかったビルマをイギリスが植民地統治する際にビルマ人だけだと団結して反逆されるという理由から、華僑、インド人、イスラム教徒をわざと入植させたのだ。
しかも経済の実権は華僑とインド人に握らせるという悪どいことをやった。
ビルマはその後、平和的な方法で華僑とインド人をだいたい追い出したが、最後に残ったのがイスラム教徒のロヒンギャという話である。
人道的にミャンマーを責める前に、原因を作ったイギリス!まずお前がなんとかしろ!と言うのが本筋なはずだが、欧米中心の国際世論は相変わらずミャンマーを責めている。
おそらく自分たちの悪事がバレるのが嫌で隠そうとしているだけだろう。
欧米の傀儡だったアウン・サン・スーチーもさすがに自国の苦難の歴史を学び始めたせいか、今回の追い出しに反対することなく適当にお茶を濁している。
米英中心の西洋文明の掲げる正義なんてしょせんこの程度のものである。
それを無批判に垂れ流すだけの日本の多くのマスコミはさらに情けない。
さて本作の内容になるが、相変わらずこの監督らしく癖の強い映画である。
3つの実話を1つにまとめているらしいが、どこまでが真実なのか寓話として脚色しているのか観ている間はなかなか判別が難しかったが、スパイがある女性に夢中になって探し歩いた話も、牛乳好きの蛇に襲われたことで牛乳配達がただ1人生き延びた話も、地雷原で羊の群れを飼っていた話もどうやら本当の話らしい。
この監督の作品ではひょんと人が死んでいくが、紛争を見慣れた人の創る作品だなと改めて感じる。
また熊とキスしたり、羊の中に紛れ込んだり、蛇や隼とからむシーンもCGの使用はなく、以前から時間をかけて徐々に動物たちを慣らした上に撮影に3年の時間をかけたらしい。
あまりに寓話に寄せているのか笑ってしまうシーンもあるのだが、不思議な映画である。
すでに50代になるモニカ・ベルッチの相変わらずのお色気はさすがである。
『アレックス』の衝撃レイプシーンをはじめ、若い時から体を張って演技してきた彼女だが、今回は裸体を見せることはない。しかし極寒の中水に潜ったり、20メートルの高さから飛び降りたりとやはり違う意味で体を張った演技を披露してくれている。
日本ではモデル体型のスタイルの良い女優はたくさんいるが、グラマーなお色気女優は少なくなったと感じる。
昔はかたせ梨乃や石田えりなどの「肉体派女優」がいた。
単にグラビアアイドルを女優として起用しても下手くそで続かないだけなのか?
本作は監督であるクストリッツァ本人が主役を兼ねている。筆者の覚えている彼の顔は髭面だが、髭を剃るとなかなか面構えが良いなと感心した。
音楽は息子のストリボールが担当しているので、映像への合わせ方も心得たものである。
大掛かりな映画ではあるもののどこか牧歌的な印象を持つのはそういうところも関係しているかもしれない。
評価が難しい映画である。
できれば2度3度観返したい欲求にもかられる。
ただし好き嫌いは分かれる。
やはり難しい!
モニカ・ベルッチ万歳
喜びや怒り、愛の尊さ、内戦の虚しさや大国の介入のクソさ加減、悲しみに嘆き、人間の愚かさやくだらなさ、ユーモアやバカにするようなギャグ、人知を超えた大いなる力などのいろんな具が、濃厚で猥雑なバルカン音楽の出汁とともにグツグツと煮込まれた、旨味Maxの寄せ鍋のような映画でした。とにかく、過剰です。
生命のエネルギーがほとばしり、整合性などクソくらえって感じで、スウィングしながら突っ走るノリに、今まで気づかなかった心のツボを突かれた気分です。いやースゴかった。
正直、ストーリーは漠然としか覚えておりません。でも、「いいんだよ、細けぇことは!」的なパワーを感じて、チマチマと考えるのを止めて感じながら観た結果、よくわかんないけどメチャクチャ良かったという結論に達しました。
全編通して複雑な空気感だなぁという印象もあります。単色ではなく、様々で相反する感情を感じさせようとしているように思えます。
「その複雑さが人間なんじゃないの」とまるでクストリッツァ監督は映画で語っているような。村の襲撃シーンや花嫁が爆死するシーンですら、悲劇でござい、と描写していないように思ってしまった。人間の複雑さを肯定するような、懐の深さを感じました。
ただ、ラストの石を敷き詰めるシーンだけは、悲しみと祈りのトーンで彩られており、印象的でした。
そして、何よりもモニカ・ベルッチが妖艶すぎて最高です!007の時はいかにも、って感じでしたが、本作ではより自然な官能美を感じました。
魅惑的な眼差しと長く豊かな黒髪がとにかく扇情的で、ほうれい線や手のシワまでもがセクシー。仕草や声も艶っぽく、衝撃的でした。美しい人は年齢関係ない、というかそれぞれの年代の美しさがあるのだな、としみじみ思いました。
えらく強烈な癖のある映画でしたが、もっとも印象に残ったのは、結局モニカ・ベルッチでした。イタリアの宝石という異名は伊達ではないです。
夢想
こんな馬鹿げた殺戮話なんて、陽気にやらないと、とてもじゃないけど悲しくてやってられない。大音量のバルカン音楽は、死者への葬い。お酒は、哀しみを薄める一粒の薬。動物達は、生命への賛美。
コスタが一番守りたかった花嫁。逃げても逃げても兵士がしつこく追いかけてくる。美しい花嫁は、内戦が続いた美しい祖国ユーゴスラビアを擬人化したものなのか?花嫁を失ったコスタは、祖国を失ったユーゴスラビアの人々なのか?
クストリッツァ監督は、爆弾と地雷と銃しかない様な悲惨な現実を忘れることなく、今日も馬鹿げた夢想を続けているのでしょう。
羊が一匹...羊が二匹..etc...可哀想
傘をさしロバに乗る姿が「エル・トポ」を想起させ羊が地雷でドッカーンが「キングスマン」の頭ドッカーンを思い出し銃撃シーンは「ハクソー・リッジ」と同等な迫力を感じた。
ダチョウが血で浸かった風呂桶に順番に突っ込み虫を食ってるシーンとか驚きとユーモア溢れる演出に圧倒させられる。
全体的にコミカルな描写があるので悲壮感漂う残酷なシーンも含めて楽しく観れて後半からの逃走劇にハラハラして色々なジャンルが詰め込まれて最後まで飽きずに鑑賞出来る。
色々な背景に意味合いなどがあるのだろうけれど純粋に映画としてエンターテイメント性も抜群で圧巻。
こんなんが観たかったんだヨ!と思わせるコレが映画だヨ!ってな感じに思いっ切り楽しめた!!
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