劇場公開日 2017年9月15日

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「クストリッツァ初洗礼!に立ち会う 。」オン・ザ・ミルキー・ロード cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0クストリッツァ初洗礼!に立ち会う 。

2017年11月20日
iPhoneアプリから投稿

やっぱり観たい、どーしても観たい…の気持ちが抑えられず。予告を観せたら一気にその気になった6歳児と、キホン付き合いのよい1歳児を引き連れて、久しぶりの「監督」クストリッツァを観に行きました。
時間も時間だったので、1歳児はお昼寝タイムで前半熟睡でしたが、6歳児は意外というかやっぱりフル参加。クストリッツァ監督の洗礼をばっちり受けたのでした。ワシだ!いやオオタカだ!ヘビが大きくなった!等ヒヤヒヤするほど多弁になったかと思うと、耳をふさいだり、手で顔を覆いながらも指の間から凝視したり。…ほほー、と余裕の構えでチラ見していたら、突如「あれ何?」「どうして?」という質問が。こちらも油断できず、どこまで・どんなふうに返すか?にも頭を使いながら観ました。(ちなみに、1歳児も、後半は目覚めてじーっと凝視…。)
ガヤガヤ歩き回っていたかと思うと、屠殺された豚の血を浴びて赤く染まるガチョウたち。乱れ飛ぶ銃弾をかい潜りながら喋りまくり、卵を割り続ける兵舎の村人。冒頭からクストリッツァ・ワールド炸裂! これだけでわくわく。主人公に続いて美しいヒロインが現れ、テンポよく恋模様が繰り広げられ、皆が入り乱れて歌い踊る酒場のシーンになだれ込むと幸せな気持ちは最高潮に。…その一方で、絶頂の先にある不幸の気配に、心中穏やかではいられなくなるのでした。
戦争が終わっても銃撃は止まず、逃避行の終着は見えない。それでも、随所に驚きと笑い、スカッとする驚きやふっと温かくなるやり取りが織り込まれ、どこまでも目くるめく体験。どこを斬っても映画そのもの。美しさも残酷さも、やっぱり最後まで凝視せずにはいられませんでした。
6歳児は、本作で初めて「地雷」というものを知りました。私は、予告ではジャッキー・チェン映画的な笑いの材料と思っていた大時計が、生身の人間に牙をむく「歴史」の表れとだったと気付き、ぞわぞわとしています。思い返すほどに気付きや実感があり、これも良作の愉しみです。
そして勿論、クストリッツァ監督と言えば、ウンザ!ウンザ!とぐいぐい前のめっていく音楽。本作の余韻を味わいながら、ウンザウンザと口ずさみ、足を踏み鳴らせば、大抵のやり切れなさは乗り越えていけそうな気がします。ウンザ!ウンザ!

cma