劇場公開日 2017年5月19日

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「不思議な魅力に溢れる奥深いSF」メッセージ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5不思議な魅力に溢れる奥深いSF

2022年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

本作は、“2001年宇宙の旅”を彷彿とさせる作品である。難解ではあるが、作品の世界観を重視した作風で、総合芸術と言われる映画の本質を感じることができる。本作は、地球に飛来した宇宙船をめぐるSFであり、派手な展開はなく、映像表現主体の不思議な魅力に溢れた作品である。

何の前触れもなく、突如、12隻の宇宙船が地球に飛来する。異星人たちの目的は地球征服なのか否か騒然とする中、アメリカ軍の依頼を受けた言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)は、異星人たちの真意を知るために、彼らとの言語によるコミュニケーションに挑んでいく。そして、試行錯誤を繰り返しながらも、ついに主人公は彼らの言語を解読し、彼らが地球にきた目的が明かされるが・・・。

ハッキリ言って、生易しい作品ではない。分かり易いナレーション(言語表現)はない。時折、主人公のフラッシュバックとして挿入される主人公と子供のやり取りは何を意味するのか説明はない。映像表現から、我々観客が想像するしかない。本来、映画には、映像表現という手法があり、それを最大限に活かした作品である。最近、言語表現を多用した観客に分かり易い作品が多い中では出色であるが、観客の想像力に挑むような作風は刺激的あり、往年の名作SF“2001年宇宙の旅”を彷彿とさせる出来映えである。

宇宙服のような厳重な装備、異星人との接触準備中に手を震わせる主人公など、異星人との接触シーンは極めてリアルであり、敵か味方か全くわからない異星人への恐怖がヒシヒシと伝わってくる。主人公の自己紹介から始まる、異星人との接触による、彼らの言語を解読するプロセスは泥臭く、手探り感が上手に表現されていて面白い。満身創痍状態になりながらも懸命に未知なる言語を解析する主人公の姿は知的好奇心に溢れていて、逞しさすら感じられた。

異星人の地球飛来の目的が明かされると、それまで、一致団結していた世界の国々が分裂してしまうシーンは、非常事態においても、自分のことしか考えられない人間のエゴが丸出しになっている。この先、物語の結末はどうなるかと思っていたら、伏線の回収とともに、作品のイメージ通りのラストに落ち着いた。

観終わって、久し振りに、何か不思議な世界を観たという独特の浮遊感を感じた。作品の世界観を完全に掴みきれず、幻惑された感じがした。全てが納得できる作品も良いが、本作のような、卓越した映像表現で我々の想像力を試すような難攻不落の作品も面白い。本作の不思議な世界観にまた挑んで完全解読してみたい。難問である程、解いてみたくなる。そんな気持ちにさせられる作品である。

みかずき
NOBUさんのコメント
2022年4月8日

今晩は
 今作、私とても好きでして・・。(どんだけ、好きな映画があるんだ!と言わないで下さい。)
 御存じの通り、テッド・チャンの短編集「あなたの人生の物語」の中の”あなたの人生の物語”を映像化した作品ですが(私は、あるレビュアーから教えて頂き、映画⇒本という普段とは逆の流れでした・・)ヘクタ・ポッドとの意思疎通を図るシーンとか、原作とは違う構成も面白くって。
 ドゥニ・ヴィルヌーブの映像作家としての力量が、”SFでも一流なんだ!”と思った映画でもありました。では。

NOBU