「傑作」メッセージ zippo228さんの映画レビュー(感想・評価)
傑作
何度も観たくなり、観るたびに細かな部分に気付かされます。
SFといえばミリタリー アクションや未来科学が描かれるのがほとんどですが、本作ではそれを意図的に下に見るような描き方がされていて面白いです。また女性への偏見も、よく見るとサラッと描かれています。このようなセンス重視の撮り方は基本的に好きではなく、この監督の「ブレードランナー2049」もセンス重視で好きでなかったですが、本作ではそれが功を奏したと思います。それぞれのシーンに意味があり、娘が誰に似ているか、キャスティングなどにも細かな配慮が感じられます。何が面白いのかわからないという人もいるようですが、SF作品としては「言語が鍵」だという新しい着想であり、人間が科学でも突然変異でも侵略でもなく、新しい言語によって進化しうるという、興味深い提起です。未来が変えられるのではなく、未来が見える、過去現在未来が並列に認識できるという事が描かれており、あの宇宙人にしても、地球人に未来で助けてもらえる事をわかっている上で地球に来ていますね。
何より興味深かったのはやはり、今の自分というハードウェアのままで、何もバージョンアップしなくても進化できるというアイディアです。公開された2016年というのは、SF作品の中では未来として描かれてきた時代であり、それがすでに現在の今となっている状況ですので、「2001年宇宙の旅」も「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」の世界も現実が追い越してしまいました。もうSFというジャンルは終わりなんじゃないかと思われていた折に、本作は新しい着想を提示したところが驚きでした。