「素晴らしすぎるSF大大大傑作」メッセージ ジョーカーさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしすぎるSF大大大傑作
もともとSF映画はどちらかというと苦手で、ゼログラビティは途中で鑑賞をやめてしまった。ゼログラビティは完成度の高い素晴らしい作品であるが、個人的にただ受け付けなかった。それでSFモノは敬遠しがちであった。だが、本作はすごすぎる。ここまでスクリーンに釘付けになってみたのは初めてだし、ここまで他のことを忘れたのは初めてだし、ここまで劇場で衝撃を受けたのは初めて。
⚠︎ネタバレは細心の注意を払って書いていますが、万が一ネタバレが入っているといけませんので、未鑑賞の方はご自身の判断でお決めください⚠︎
本作において重要なのは、あくまで1人の女性に重きを置いているところである。パンフレットにも書いてあったが、主人公のルイーズは本作と我々観客の架け橋のような役割を果たしている。また、ネタバレになるので詳しくは記せないが、終着点が素晴らしい。SFで壮大になりすぎて置いてかれることもなく、一人の人間を描いているところに魅了された。
また、もちろん題材や発想、映像が素晴らしいのだが、キャスティングがまた絶妙。ルイーズは先ほど記した通り観客との架け橋のような役割を果たしているのだが、そのような役割を果たしていながら、感動を表現し観客の心に語りかけてくるキャラクターであり、エイミーアダムスの演技力なしには成り立たない映画である。
それだけではなく、むしろ本作で素晴らしいのはイアン博士を演じたジェレミーレナーである。助演男優賞あげますよ。アベンジャーズのホークアイでおなじみだが、こちらの役もまた馴染んでる。主人公を支える立場ではあるのだが、唯一の理解者であり、作品に包容感が生まれる。
さて、いままでは登場人物について触れてきたが、ストーリーについて記していこうと思う。
本作はアカデミー賞音響編集賞を獲っているのだが、音楽はやはり本作において重要な役割を果たしている。未知の世界に対する高揚感と恐怖を同時にする挿入曲はあくまでBGM的であり、映画を構成する一部分でしかない。しかし、その“音”は間違いなく観客に語りかけてくるものがあるし、音だけでも圧倒されてしまう。
また、一番重要である構成。素晴らしいの一言。映像でしか表現できない衝撃を与えてくる。世界の中ではたった1人のなんでもない女性が未知の存在に呑まれていく。その構成が我々を映画の世界により吸い込む。
独特の世界観の中に、謎の包容感があるのも魅力を感じる。“殻”へ向かうときの草原には、なぜか引き込まれてしまうのだ。それは光などの綿密な演出のおかげだとは思うが、それ以前にキャスト陣のオーラがそうさせているのかもしれない。
SF映画としての衝撃と感動。それだけではなく一人の女性の衝撃と感動。我々には想像もつかない驚異的な出来事を映像で完璧に表現し、気づいたら映画の世界に入り込んでいる。こんな映画体験は初めてかもしれない。そんな大大大傑作だった。