劇場公開日 2016年11月18日

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「ひど過ぎない?」ガール・オン・ザ・トレイン うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ひど過ぎない?

2021年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

異常に評価が高すぎると思う。★4つ程度の人の感想を読むと、たいていは女性の意見のように見える。見えるだけで、実際にどうだか分からないが、女性には支持される映画のようだ。

この映画、事件は起きない。探偵が主人公ではないし、理由も分からず毎日列車に乗って外を眺めているアル中女が妄想に苦しむお話しだ。偶然自分と関係のある女性が失踪し、その死体が発見され、容疑者としてマークされ、酒で寸断された記憶をたどりながら真相にたどり着く。

口の周りにケチャップたっぷり着けて、「誰が私のオムレツを食べたの?!疑わしきは、自分?酒のせいで何も覚えていない」みたいなことを、視点を変え、時間軸を変え、妄想なのか、映画の編集が下手なだけなのか、奇跡的に文学的な独り語りと、ダニー・エルフマンの幻想的なスコアのおかげで、なんだかすごい映画を見ているような気にさせてくれる。

45分で終わる話を、わざわざややこしくして、暗く幻想的なトーンで殺人と不倫を語っていく。哀れな女性の転落するさまを、覗き見しているような気にさせてくれる。列車の窓から見える光景は、レイチェルの記憶の錯乱で、暗いトンネルにさえぎられたり、同じ景色を繰り返したりして、観客を惑わせる。

=====ここから先は、ネタバレと文句しかありません。========

どう考えてもつじつまが合わない。失踪した女性メガンがセラピストに打ち明けた秘密をレイチェルには知りようがない。彼女が若い時、風呂で眠ってしまい、極秘出産した赤ん坊を死なせてしまった秘密。この女、今はベビーシッターをしていて、赤ん坊の父親と不倫をしている。そんな女性に赤ん坊を預ける母親がいるだろか?

それがアナ。アナは浮気と知りつつ妻のいる男性トムと関係を続け、やがて妻レイチェルの飲酒が原因で相手が離婚し、晴れてトムと夫婦に。略奪婚だ。授かったトムとの赤ん坊に別れた妻レイチェルが危害を加えようとする。アナにとってはレイチェルはアル中のストーカーだ。

真相は、あまりにもくだらない。ただのDV野郎でサイテーの元亭主トムが、レイチェルを精神的に追い詰め、会社では女性関係のだらしなさで解雇に。ところが解雇の理由もレイチェルの酒のせいにしてしまう。レイチェルは夫の解雇に責任を感じている。子供が出来ないのも自分のせい。ますます酒に溺れ、記憶と正常な判断力は失われる。トムは浮気相手と再婚し、やがて子供が出来、絵にかいたようなしあわせな家庭を築いているようで、そのベビーシッターとも関係済みで、妊娠が発覚すると、はずみで殺してしまう。

レイチェルは、この夫と暮らしていた間、DVのショックが強すぎて正常な判断力を失っていたらしい。何ひとつ覚えていないのだ。映画で語られるのは、列車の中で断片的によみがえる記憶と、車窓から見えるしあわせそうな家庭。

アナは、このサイテー亭主に危害は加えられていなかったと言うのか?夫の正体に気が付かなかったとでも言うのか。オンナ癖で会社をクビになるような男に。はずみでベビーシッターを殺してしまうような暴力男に。アナは、ベビーシッターのメガンが近づいてきた動機が夫との浮気だったことに気が付かなかったとでも言うのか。そんな男と幸せな家庭が築けるとでも思ったのか。

ついでに言えば、結末も気に入らない。殺されかけたレイチェルがとっさに反撃した一撃でトムは瀕死の重傷を負い、アナがとどめを刺す。映画的にもスッキリしない。こういう男は惨めに社会的制裁を喰らうべきなのに、裁きを受けることもなく、罪を償うこともなく、あっけなく死ぬ。意味ありげなモノローグで物語が締めくくられる。「3人の絆は永遠に。私は過去を捨て、列車は先に進む」

ここで言う3人とは、レイチェル、アナ、死んだメガンのことか?絆って、同じ男にだまされたこと?

ひど過ぎない?

2018.10.16

うそつきカモメ