劇場公開日 2016年11月18日

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ガール・オン・ザ・トレイン : 映画評論・批評

2016年11月8日更新

2016年11月18日よりTOHOシネマズみゆき座ほかにてロードショー

厄介な“心理描写”を手際よく処理し、洗練された映像で魅せるミステリー

原作はポーラ・ホーキンズの世界的なベストセラー。“イギリス版「ゴーン・ガール」”とも評された小説だけにミステリー好きの筆者も大いに好奇心をそそられたのだが、結局手に取らなかった。それぞれ秘密を抱えたアラサー女性3人の独白で物語が進行し、恋愛、結婚、出産に不倫やDVが絡んでくるというドロドロの内容に、昼メロ的な安っぽさを予感してしまったからだ。というわけで原作未読のまま映画を観たわけだが、これが滅法面白い!

主人公の孤独な女性レイチェルは、マンハッタン行きの電車の車窓から見えるひと組の夫婦の姿に、かつて幸せだった頃の自分の思い出を重ね、ずたずたに傷ついた心を癒やすのが日課。そんなレイチェルが“理想の夫婦”の妻のほうの不倫現場を目撃した直後に殺人事件に巻き込まれ、警察に疑いの目を向けられながらも真相究明に乗り出すという物語だ。

いわゆる素人探偵ものの一種なのだが、結婚生活が破綻してアルコールに依存中のレイチェルは、他人の私生活を覗き見しては妄想を膨らませ、現実逃避を繰り返している。おまけに自虐的で虚言癖の気もある彼女は、酩酊中の記憶障害(ブラックアウト)によって窮地に陥っていく。女性のあらゆるネガティヴな部分をかき集めたかのような暗黒ヒロインを演じるエミリー・ブラントの目つきは、冒頭から虚ろにさまよい続け、まさにこの“信用できない素人探偵”の危なっかしい言動が本作のスリルの源になっている。

きめ細やかな描き込みが不可欠な心理ミステリーというジャンルは、おおむね映画よりも小説に分があるが、「ヘルプ 心がつなぐストーリー」のテイト・テイラー監督は説明的になりがちで厄介な“心理描写”をフラッシュバックで手際よく見せ、巧みな時間配分で軽快なテンポを生み出した。魅惑的な女優陣(艶めかしいヘイリー・ベネット!)と怪しげな男優陣を配しつつ、デンマーク人の女性撮影監督シャルロッテ・ブルース・クリステンセンによる洗練された映像に、不穏な緊張感を醸し出すダニー・エルフマンの音楽をフィーチャー。その充実したプロダクションに安っぽさは微塵もない。

心にずしりと響く重厚なミステリーを所望する向きにはお勧めし難いが、とにかく本作は矢継ぎ早にいろんなことが起こる。クライマックスには劇場で叫び声が上がりそうな衝撃シーンが炸裂するのだが、その驚愕の瞬間はたったひとつの小道具によってもたらされる。謎解きとはまったく別次元のおどろおどろしい“決着”がなぜか本作にはふさわしい気もして、奇妙な満足感を得られたのであった。

高橋諭治

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