「お酒も悲しみに暮れる弱さもほどほどに」ガール・オン・ザ・トレイン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
お酒も悲しみに暮れる弱さもほどほどに
全米ベストセラー小説の映画化。
離婚の傷が癒えないレイチェルは、通勤電車の窓から見える幸せそうな夫婦に憧れを抱いていたが、やがて殺人事件に巻き込まれる…。
殺人事件の鍵を握る3人の女性。
疑惑と共に、各々の下世話的な面も浮かび上がる…。
殺されたのは、レイチェルが憧れを抱いていた夫婦の妻、メガン。
が、その理想の夫婦像はすでに破綻、夫にはDV疑惑があり、彼女もまた担当カウンセラーと不倫をしていた…。
その不倫の現場を電車の窓から偶々目撃したのが、レイチェル。
確かめようと電車を降り、夫婦の家に向かう記憶が、謎の空白。
重度のアルコール依存のレイチェル。
その時も酩酊しており、これまでにもアルコールで問題言動。離婚の原因も然り。
事件当時の記憶もアリバイも無く、さらにレイチェルはその隣家で頻繁に目撃されていた…。
結婚生活時、被害者宅と隣家だったレイチェル。
今、かつて暮らしていた家には、元夫が新しい妻と授かった赤ん坊と幸せに暮らしていた。
その新妻アナは、元夫の不倫相手。
一度不法侵入し、赤ん坊を誘拐しようとしたレイチェル。
さらに、赤ん坊の子守をしていたのが、メガンだった…。
ストーカー紛いののぞき見、アル中、不倫、SEX、DV、殺人…と、下世話ネタのオンパレード。
登場人物の関係図も結構複雑。アナ役のレベッカ・ファーガソンとメガン役のヘイリー・ベネットがどちらも艶かしいブロンド美女で似てて、時々こんがらがる。
怪しい人物が続々浮上。最有力容疑者レイチェルを筆頭に、殺されたメガンの不倫相手、DV夫、レイチェルの元夫も怪しい。
が、伏線回収の鮮やかなミステリー…とはちと言い難く、ズバリこれはもう昼メロの世界。
しかし監督テイト・テイラーは、謎や疑惑や各々の黒い面をスリリングに、ゲスい事件の真相や犯人の動機、ヒロインの再生など、上々のサスペンスに仕上げている。
関わりたくはないが、何処か同情を禁じ得ないヒロインの悲哀を、エミリー・ブラントが巧みな演技と虚ろな表情で体現。
サスペンスとして楽しめるが、自分の弱さを戒めるメッセージを垣間見れた。
悲しみに暮れるのは分かる。
しかし、悲しみを紛らそうとアルコールやクスリに手を出すのは自分の弱さ。
それに頼って堕ちたら実の破滅。
ましてや、殺人事件なんかに巻き込まれたら…なんてね。
悲しみは時が癒すし、いつまでも引き摺ってはダメ。
そういう時こそ自分自身をしっかり保って。
お酒も悲しみに暮れる弱さもほどほどに。