劇場公開日 2016年11月18日

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「ゴーン・ガールのイギリス版だって!?プロモーションのミスリードで評価の低い本作を全力で擁護します。」ガール・オン・ザ・トレイン さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ゴーン・ガールのイギリス版だって!?プロモーションのミスリードで評価の低い本作を全力で擁護します。

2017年2月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

"のぞき見ミステリー"?そんなんじゃぁありませんよ。
"初めて体験する衝撃のラスト"?ミス・リードはマジ止めて。
謎解きメインじゃないっすよ。
だってー、そこメインにするなら、こんなキャストにしてないって!
キャスト見ただけで、ネタばれじゃん。
かなり前に観ました。

『ガール・オン・ザ・トレイン(2016)』
原題 The Girl on the Train

(あらすじ)
毎日、通勤電車から眺める風景を見ながら、妄想イラストを描くレイチェル(エミリー・ブラント)。
特にレイチェルが惹かれた風景は、傍目には幸せ一杯に見える若いメーガン(ヘイリー・ベネット)とスコットのカップル。その二人の姿に、円満だった頃の自分の結婚生活を重ねるレイチェル。
レイチェルはアルコールが原因で離婚し、友人の元で生活しています。
忘れようとしても、元夫が愛人だったアナ(レベッカ・ファーガソン)と、生まれた子供と生活していることを考えると、我慢ならない程にお酒が欲しくなる。

アルコールの量は増え、依存症は深刻化。
常に酩酊状態で、記憶もあやふや。
元夫へのストーキング、幻覚、幻聴で、心が壊れそうなことは、自分でも自覚している。
しかし、お酒も元夫への執着も止めることができない。
そんなある日、自分を重ねていたメーガンの不倫現場を目撃し、抑えきれない強い怒りに思わず電車を途中下車するレイチェル。
そして気がつくと、血まみれで友人宅のバスルームに……。
暫くして、メーガンが行方不明であることをニュースで知る。
心がざわつき携帯を確認すると、泥酔した自分が暴言を吐く動画が残っている。
しかし、記憶は全くない。
焦って、とっちらかった記憶の断片をかき集める。
すると、メーガンを襲う自分の姿が……。
私がメーガンを襲ったのか?
レイチェルは、あの夜の自分の記憶と、行方不明のメーガンを探し始める。
原作はベストセラーなんですね。すみません。未読です!

泥酔してなくした記憶、妄想、現実、過去、現在、フラッシュバックする記憶は真実なのか、妄想か?
行ったり来たりしながら、酔っ払いのレイチェルが失踪したメーガンの真相に迫る、素人探偵のミステリー仕立てとなっております。
あくまで"仕立て"であり、本作が言いたいのはそんなことではないと思われますので、またまたいつものように長文で語りたいと思います。
宜しく、お願いいたします。

冒頭、無心にイラストを描くレイチェルが、電車の外を眺め、隣に座った女性の抱く赤ちゃんへ過剰な笑顔を向ける。そしてバックの中にある酒瓶へズーム・イン。
レイチェルだけではなく、主要3人の女性にくどくど語らせず背景を分からせるところとか、上手いなぁと思いました。

しかしタイトルにもあり、劇中何度も登場する電車="トレイン"が一体なんの暗喩であるかは、容易に想像できると思います。
トレインは女性の、レイチェルの人生ですね、きっと。
レイチェルは自分が乗った電車の窓から、2つの家庭をのぞき見しています。

1つは若く、情熱的に夫と愛を交わすセクシーなメーガンの家。
2つ目は、元夫の愛人、現在の妻で、レイチェルが望んでも得ることができなかった子供の母親である、アナの家。

この2つの家庭はご近所さんです。
アナは今、レイチェルが元夫と暮らしていた家で生活しています。
電車はマンハッタンを目指しているようですが、レイチェルは目的地では降りず、何度もこの2つの家庭がある駅に途中下車します。
女として愛される人生のメーガン。
母として妻として愛される人生のアナ。
女性の生き方に王道があるとするなら、この2人はもの凄く分かりやすいひな形ではないかと思います。
しかしながら、この一見すると幸せそうな2人にも、心に寂しさはあるのです。
という複雑な女性心理の描かれ方は、監督&脚本が女性ならではでしょうか。

ミステリーとして観るなら、記憶をなくす、記憶を都合良く思い出す、と言った、どっかで聞いたような、脚本の穴ばかりが目立つかも知れません。
しかし、走り続ける電車、出口の見えないトンネル、赤ちゃん、が、女性心理の暗喩として繰り返し描かれているところが、秀逸だと思います。
本作はレイチェルが、望んだ生き方を得られない駅を通り過ぎ、正しい目的地を目指す物語です。
イギリス版「ゴーン・ガール」とか、的外れも良いとこです!

上にも描きましたが、主要3人の女性がぐちぐち語らないのがいいです!
ラストはやはり、海岸線を走る電車で終わります。
そう、何があっても、走り続けるしかないんです。
もっと言えば、どうせ男になんかわかるかい!
って、声が聞こえたようでした。
あ、いつもの幻聴です。すみません。

それにしても、エミリー・ブラント。熱演です。
そしてなんといっても、ヘイリー・ベネット。なんでしょうね。この不安定な美しさ。けど儚くない、芯は強い。セクシーだけど、乾いてるの。
"マグニフィセント・セブン" もヘイリー目当てで観ました!
監督がテイト・テイラー。
ジェニファー・ローレンス主演作の中では一番だと思っている" ウインターズ・ボーン" の監督さんですね。
あと、ドラマ界ではかなり有名な、"フレンズ"のリサ・クドロ-。
"ザット'70sショー"でアシュトン・カッチャーの彼女役をしてた、ローラ・プレポン。
なんかが、脇で出てて嬉しかったです。

ミステリー仕立てでありながら、メッセージ性が強い本作を、同じくホラー仕立て評価を落としている、痛烈なイラン社会批判&イラン女性への応援歌だった、「ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女(DVD出てるよ)」と同様に、全力でオススメします。

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さぽ太