「印象的な蝉時雨」沈黙 サイレンス ヨコヨコさんの映画レビュー(感想・評価)
印象的な蝉時雨
暗闇の中、蝉時雨が突然止み、沈黙から始まる。
迫害により殉教し、沈黙する多くの信徒。答えを持たない若き司祭。繰り返される苦しみの前に、愛する神さえも黙して語らない。
信徒の命を引き換えに棄教を迫る"イノウエ"。彼らは決して悪ではなく、日本に暮らすごく普通の善良な人間だ。彼らは彼らなりの信仰を持ち、そこに根を張って暮らしている。それが同じ人間とはいえ、異教徒によって脅かされる恐怖も分かる。
多くの日本人にとって、未だに信仰としてのキリスト教は身近ではない。行事としてのキリスト教は信仰とは無関係だ。自然と共に生きて自然の中に神を見出す日本人、科学を足がかりに発展を遂げながら愛を掲げるオランダ人。
どちらが正義というのではない、永久に相容れないもの、信仰と日本という国の形が浮き彫りになり、ラストで再び流れる蝉時雨と、繰り返し襲いくる波の音が、この映画を見た者から言葉を奪い、沈黙に抱かれていくのを感じた。
重厚な映画だった。そして酷く疲れた。正直もう二度と見たくない。精神を削られる気がする。酒を飲んでダメージを薄めることにします。でも見て後悔はない。見ない後悔の方が大きいだろう。
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