「人生経過によって見方が変わってしまった」光をくれた人 faye smilesさんの映画レビュー(感想・評価)
人生経過によって見方が変わってしまった
主役2人のファンであるにも関わらず、あらすじとレビューだけ読んで「なんだか妻にイライラしそうだな」と思っているうちに、なんとなく観る機会を失ってしまっていた作品でしたが、
観るのが今で良かった。
とても良い映画でした。
ヤヌスという灯台の名前以外はキリスト教的観念が盛り込まれているので、熱心ではないものの幼児洗礼を受けて育った私としては、登場人物達の「罪意識」が胸に染入る気がしました。
そして公開時の私ではなく、今の私は子供を授かれない身なので、イザベルの苦しみは全部ではないけれど理解出来ました。
「当然描いていた普通の幸せ」が得られないと知った時、人は惑い、ごく普通の人でも何かが壊れてしまうんです。
愛する人との子供が欲しいと願う彼女の気持ちは、痛いほどよく分かります。
とはいえ、彼女の行いが許されるものではないのですが、戦争で「罪意識」を背負ったトムが、最後までイザベルに感謝の念だけを抱いていた事が印象的でした。
人を殺した罪人の自分が、イザベルを愛し愛される経験によって、一度神に許されたと感じたのだと思います。
許された事のある人は、必要以上に誰かを責め続けることが出来ない。まさしく聖書的観念だなと思いました。
ハナの夫の「憎むことはずっとその事を考える事、だけど許す事は一度だけ」という言葉も言わずもがな。
聖書を読むとイザベルの様な不妊の女性の話がたんまり出てきます。読みながら「この人達はなんでこんなにいつも悩んでいて不器用なんだろう?」と思ってました。
でも、人間とはこの映画のように答えが分かっていながら、それを選ぶことが出来ない。そういう存在なのでしょうね。
死の床で尚許しを乞い続けるイザベルに「君はもう許されているよ。君も、もう自分を許さなきゃ」と声を掛けたトムの言葉で、涙が止まりませんでした。
人を愛することは時に苦しみを伴うけれど、故に自分は生きていると感じられる。最初のラブレターでもそう書いてましたね。
トムの満足そうな表情が、とても印象的なラストでした。