「人は誰かの灯台になれる」光をくれた人 everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
人は誰かの灯台になれる
が、誰かの代わりにはなれないのではないでしょうか。
戦争で兄達を失ったIsabelは、Tomに兄の面影を見たのか、惹かれるのが随分早かったです。帰還兵で脱け殻のようなTomの心に火を灯したのはIsabel。流産を繰り返したIsabelの喪失感を埋めたのはLucy-Grace。夫と娘を失い悲嘆に暮れていたHannahに希望の光を与えたのはTom。晩年のTomに嬉しいサプライズをもたらしたのはLucy-Grace。
人は絶望の淵に立つ人に手を差し伸べることができ、それはその人にとって生きる希望の光になりうることを言いたいのだと思います。同時にHannahの亡き夫が語る、恨みは繰り返すが赦しは一度で済む、という教訓がテーマです。
Isabelは会って間もないTomに自らプロポーズ、即ちJanus島への移住は自分で決めたことです。思うようにいかなかったのは出産。流れ着いた赤ん坊を勝手に自分のものとし、夫に共犯になるよう説得するのもIsabel。夫が自分の思い通りにならないと激怒。幸せな家庭を夫に壊されたという怒りのようでしたが、誰かを不幸のどん底に追いやり、罪の上に成り立つ幸せです。当時の女性にとって「不毛」は世間的に不名誉だったであろうことを考慮しても、理性のないIsabelの未熟で自己中なキャラにイラついてしまいました。彼女の後悔は殆ど語られず、彼女がその後どう罪を償い、どんな精神的成長を見せたかは分かりません。また、Hannahが再度我が子を手放す決心をするのは断腸の思いである筈で、描写があっさりし過ぎていると思いました。
つまる所これは、愛する家族と良心の呵責の狭間で苦渋の決断をするTomだけの物語と思って観る必要があります。しかし、子供は無事だなんていう匿名の手紙やガラガラの返還は、Tom自身の罪悪感の穴埋めに過ぎず、理性と良心に従った結論に辿り着くまでの過程とは言え、まるで誘拐犯のような手段でした。
せめて洗礼の時、Hannahに気付いた時に決断していれば、傷はもう少し浅く済みましたかね…。少なくとも幼いLucy-Graceが一人で灯台を探すことはなかったでしょう。
"You only have to forgive once. To resent, you have to do it all day, every day. You have to keep remembering all the bad things."