劇場公開日 2017年2月11日

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「難民の島で育った少年の未来が健やかであって欲しいと願う。」海は燃えている イタリア最南端の小さな島 MPさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5難民の島で育った少年の未来が健やかであって欲しいと願う。

2017年2月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

地中海に浮かぶイタリア最南端の島で、12歳の少年、サムエレがおじさんの船に乗って一緒に網を引いている。家ではお祖母ちゃんがマンマのご飯を用意して2人の帰宅を待っている。まるで、"小さな島の物語・イタリア"(注:毎週イタリアの村々の日常をリポートするドキュメンタリー番組・BS日テレ)の一コマを見るようではないか!?しかし、同じ頃、島の対岸には命からがら祖国を脱出して来たアフリカや中東からの難民たちが次々と漂着している。沖に浮かぶ難民船の地下室では命が持たなかった人々の死体が無残に折り重なっている。生き延びたとしても、あまりに過酷な船旅のショックからおかしくなっている女性もいる。そんな、決してニュース映像では映さない島民と難民の対照的な表情から、効果的な難民対策など到底見つかりそうにもない、この社会の絶望的な乖離を実感させるドキュメンタリーの最後で、さらに強烈な一撃が待ち構えている。実際に島に住みながら島民たちと交流したという監督が(恐らく)偶然手に入れたに違いない幕切れの何と不気味なことか!?ラストショットには、難民問題と根底でリンクしている戦争とテロの時代を覆う危険な空気が充満して、一瞬心が凍り付く。今の世界を凝縮したような島で育ったサムエレの未来が、どうか健やかであって欲しいと願うばかりだ。

清藤秀人