榎田貿易堂のレビュー・感想・評価
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ナントカチサト
オフビートでスラップスティック、そしてハートウォーミングと、何だか40年位前にあった喜多嶋隆の『CFギャングシリーズ』のような匂い(勿論内容は全然違う)を感じた作品であった。違う角度からだと『寅さんシリーズ』にも近いニュアンスがあるかもしれない。まぁ、内容はもっとエロで下世話なのだが(苦笑
飯塚監督は、CMや舞台も手懸けているということなので、演出や映像編集もテレビ的芝居的な作りだから馴染みを感じる。親しみ易い構成なのである。
今作品の最大の功罪は所謂『ご当地シネマ』である。特に今作は監督、主人公とも渋川市出身と言うことで、相当思い入れも強い形が映像に滴り落ちてくるようである。伊香保温泉の階段、珍宝館、水沢うどん、赤城山、グリーン牧場と、渋川を知ってる人が観たら、その親近感に前のめりになることだろう。但し、知らない人は思い入れがないから単なるロケーションの一つだ。地方公共団体の肩入れとの乖離が透けて見えて、なんとなく興ざめしてしまう危険を孕んでしまうのが功罪の理由。
アバンタイトルでいきなりの性交シーンなのだが、それが建物(女が経営してる美容室)を撮すだけの映像で勿論中のシーンは描かれていない。営業中の札を休憩中に反転させること、そして子供が窓から覗いている俯瞰ショットを映し出すことで激しさをよりリアルに強調させている、ギャグの一つである。まぁ、その後も、女性従業員のセックスレスを解決するための作戦も、エロを間接的にしかし強烈に表現するシチュエーションは中々の面白い演出、脚本である。
しかし、本作の本当のキモは、主人公達のジリジリとした焦燥感や将来の不安という負の気持を、どうやって飼い慣らしていこうか、その現実との折り合いのなかで、どう人生を過ごしていくか、答えのみつからないテーマを、それでもポジティヴに生きていく思いを綴ったドラマなのである。時にはニヒルに、時には馬鹿になり、大人なのに大人になれない人間達の葛藤を、しかし湿度の低い爽やかさをスパイスに、風味を利かせたという感じか。こういうジャンクフード的作品も面白く鑑賞させてもらった。台詞もバンバン、パンチラインが入ってくるので、その言葉遊びも心地よい。『ダンディでバイ』、『立った儘パンパン』『69点じゃなくて、76点』『記憶と食材は新鮮な内に使おう』等々、キラーワードの数々が大変小気味よい。
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