「信念に従って生きたドイツの検事長フリッツ・バウアーの姿ばカッコ良い」アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
信念に従って生きたドイツの検事長フリッツ・バウアーの姿ばカッコ良い
ラース・クラウメ 監督による2015年製作(105分/G)のドイツ映画。
原題:Der Staat gegen Fritz Bauer、配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム。
劇場公開日:2017年1月7日
舞台は1950年代後半の独フランクフルト。主人公は、国外逃亡中のナチス・アイヒマンをドイツ裁判所で裁くことに執念を燃やしているユダヤ系ドイツ検事長のフリッツ・バウアー。
元ナチスや親派の人間が妨害工作をしてくるのが、何とも生々しいし、リアリティを感じた。第二大戦の反省克服の点では模範にも見えているだけに、日本だけでなくドイツでも戦犯を擁護する政治権力が存在することに少々驚かされた。
フリッツ・バウアーを演ずるブルクハルト・クラウスナーの迸る情熱を抑えてもそれが滲み出るという秀逸な演技に凄さを覚えた。また、アイヒマンを捕まえるために、国家反逆罪のリスクを承知で信念を持って、イスラエルのモサドにアイヒマン潜伏情報を流したという史実に、驚愕。全く知らなかったが、世界は意外なところで繋がっているということか。バウアーのアイヒマンをドイツで裁きたいという強い意志は、現実には叶わなかったことへの、苦味の様なものは、日本人も戦犯を裁けず、強く感じさせられた。
見ている時は何という綺麗な男の子と思っていたが、女装美男子のクラブ歌手を演じた女優リリト・シュタンゲンベルクの妖艶な美しさが、印象に残った。同性愛が戦後でもドイツで犯罪であったことを初めて知った。
好きな歴史ものということもあろうが、全体的に十分楽しめて、ドイツ映画への関心が相当に上昇した。
監督ラース・クラウメ、製作トマス・クフス、脚本ラース・クラウメ 、オリビエ・グエズ。
撮影イェンス・ハラント、美術コーラ・プラッツ、衣装エスター・バルツ、編集バーバラ・ギス、音楽ユリアン・マース 、クルストフ・M・カイザー。
出演
ブルクハルト・クラウスナーフリッツ・バウアー、ロナルト・ツェアフェルトカール・アンガーマン、セバスチャン・ブロムベルグウルリヒ・クライトラー、イェルク・シュットアウフパウル・ゲプハルト、リリト・シュタンゲンベルクヴィクトリア、ローラ・トンケシュット嬢、ゲッツ・シューベルト、ゲオルク=アウグスト・ツィン、コルネリア・グレーシェルシャルロッテ・アンガーマン、ロバート・アトツォルンシャルロッテの父、マティアス・バイデンヘーファーツヴィ・アハロニ、ルーディガー・クリンクハインツ・マーラー、パウルス・マンカーフリードリヒ・モルラッハ、マイケル・シェンクアドルフ・アイヒマン、ティロ・ベルナーイサー・ハレルティ、ダニー・レビチェイム・コーン。