「このポテンシャルは単なる文化の間違い探しで終わってしまうにはもったいない」KUBO クボ 二本の弦の秘密 ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
このポテンシャルは単なる文化の間違い探しで終わってしまうにはもったいない
この作品のテーマは未完成であった物語の決着をどうつけるか?(心に)空いた穴をどう塞ぐのか?にあると思う。
不完全であること、儚いこと、命には終わりがあること、監督はわびさびの心とインタビューで答えているが、亡くなった両親を二本の三味線の糸(本作では弦)に見立て、そこに自分という一本の糸を加えて音を奏でるという、監督ならではの捉え方に感銘を受けた。
人は人を思い出に変えることで力を得る。それが物語の、心の穴を塞ぐ。どんな武器よりも強いのだ。という心震えるクライマックスになっていた。今自分が見ているのはミニチュアだというのを忘れてしまうほど引き込まれた。
日本へのラブレターと(勝手に)言っているが、多分両親に対するラブレターだと思う。こんな作品を息子からプレゼントされたら涙腺崩壊必至である。
日本の宗教感にある様々なものに命があるというような考え方、例えば人形に命を吹き込むようなストップモーションアニメでの表現が作品のテーマと見事にマッチしていた。
両親ともに仏教徒であった監督ならではで、多くのキリスト教的なハリウッド映画とは一味違う作品になっていた。
(一味違い過ぎて興行収入的にはイマイチだったそうだ。残念。)
三味線はもともと日本完全オリジナルの楽器ではないし、服装や建築や言語など、文化自体も様々な国の文化が影響し合って出来ているものなので、「日本じゃない!!!」とヒステリックに叫ぶのもいいが、そんなことより絵としてカッコ良ければ娯楽作品としては合格でしょう。例えば闇の姉妹なんかすごく怖くてカッコいいし、葛飾北斎の高波、歌川国芳の「相馬の古内裏」オマージュの巨大骸骨なんて超興奮しましたよ。
(作り手が楽しそうに作ってる映像もEDでチラ見せしてましたね)
若干中盤の展開が退屈なところもあったが、全体的には大満足!
コララインは若干ティム・バートン色が拭えなかったが、本作でライカはピクサー、ドリームワークス、イルミネーション・エンターテイメントに並ぶアニメーションスタジオになったんじゃないかと個人的に思います。
特に今年はイルミネーションの「SING/シング」と本作ライカの「KUBO/クボ」という二代最高傑作が出てしまったのでラセターが休職中のピクサーがピンチ(笑)
とにかく万人にオススメの映画です。