劇場公開日 2017年8月26日

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「「利」を律すべきもの」関ヶ原 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0「利」を律すべきもの

2023年11月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

いま、「関ヶ原」という、途方もなく茫漠とした映画のレビューを書くにあたって、どこから手をつけて良いやら、ぼんやり苦慮していると、いままでに観た色々な映画のワンシーンがシャボン玉のように現れては消え、また現れて消えてを繰り返すのです。
「小説家を見つけたら」で老作家は言います。「心のままに書け」。
じゃあ、まぁそうしてみますか!

三國無双より戦国無双派、石田三成大好きの私としては、三成主役の「関ヶ原」なんてご褒美じゃないですか!あざーす!な、気持ちで観た。
歴史物の本も読むし、時代劇も好きだから、大まかな「関ヶ原」の流れは認識済み。
だからこそ、楽しめた部分は家康と三成の合戦前の駆け引きの部分で、これはこの映画の一番の見所。

むしろ何故この路線で全体を作り込まなかったのか?濃厚な政治ドラマに、ちょっと戦国らしい血生臭さがある、そんなバランスで組み立てた方が面白かったんじゃなかろうか。

俳優陣の早口については、書いてる人がかなりいるが、これは早口だからつまらない訳では決してない。
DVD発売記念インタビューで、監督は「セリフがわからないことが問題だ、というのは違うんじゃないか」とおっしゃっているが、確かに早口で矢継ぎ早にセリフをまくし立てる系の映画にも面白い物は沢山ある。

そういう意味では監督は間違ってない。
問題は「つまらない上に早口だからワケわからない」ことにあるのだ!
表情、アクション、演出で「何を思っているのか?」「どうしたいのか?」「この後どうなるのか?」を提示出来るハズなのに、全く出来てないから意味不明なのだ!うーん、惜しい。

個人的に一番印象に残っているのは秀秋の裏切りのシーン。
「器じゃない」「優柔不断」「ビビり」と、散々な評価が通説の秀秋で、私も常々「こいつには共感出来ないな~」と思っていたのだが、今作の裏切りシーンは(フィクションなのはわかっちゃいるけど)今までにない切り口で、なおかつ秀秋に同情するものがあった。
むしろ主役は秀秋、なんじゃないか?
むしろ秀秋が主役の方が面白かったんじゃないか?!

総評としては冒頭の通り、面白いんだか面白くないんだか、凡作というか、訴えて来るものがない寂しい作品なのだが、多分それはこの映画に軸足になるようなテーマがないから、だと思う。
本来それは「義」であるべきだが、「義」を何と定義するのか、作り手の中で固まってなかったんじゃなかろうか。

三成が残したかった「義」のある世界、それは今こんなにも遠い。

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つとみ