劇場公開日 2017年8月26日

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「私の今年一番の映画作品」関ヶ原 wakemeupさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0私の今年一番の映画作品

2017年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

長文のレビュー、言葉遣いの不備等々があるかと思いますが、ご容赦ください。

さて、一言で言えば、今年見た映画で一番良かった。これにつきます。
これは本作を含め8月だけで3本の映画を劇場で鑑賞している映画好きとしての私の側面と、司馬遼太郎を読んで中高校生時代を過ごし、読了した著作の文庫本が3桁程度である司馬遼太郎好きとしての私の双方の側面より出した結論です。

本作は本編だけで2時間半。予告を併せるとおよそ3時間。これは近頃の作品時間としては長め。しかし、「冗長か?」といえば、決してそのようなことはない。一つ一つのエピソードが「関ヶ原」という戦国時代最大の合戦へとつながっていきます。

本作は「関ヶ原」という歴史上に存在した、あの時点におけるあの場所での大事件を描いた作品であるということが大前提。視点を仮りに石田三成に固定するならタイトルは「石田三成」にすればいいはずです。
本作はあくまで「関ヶ原」。この応仁の乱にその規模で劣るとも知名度では勝る戦を書くために必要とされる限度で、主軸は石田三成の視点を用い、対比軸として徳川家康の視点を用いています。そして、本作では石田三成との恋愛軸及び補足視点としての初芽の視点を用いているという印象。原作はもっと視点となる人物が多いですね。
そして、それぞれ背負っている背景も物語との関係性で描くことで必要最低限には「関ヶ原」に至る背景事情は把握できるのではないでしょうか。一本の物語の軸を感じられる脚本でした。
原作「関ヶ原」より内容が薄く感じられる方もいらっしゃると思いますが、私個人としては映画という数々の制約が存在する媒体において十二分に多面的に描いていると思います。そして、ちょいちょい司馬遼太郎の書く小話を想起させるやりとりや場面があって、うれしかったです。

俳優陣の演技も素晴らしかったと思います。主演の岡田くんは本当に時々アイドルだってことを忘れるくらいの演技力ですね。バーター出演もなく(それ自体を否定する気はありませんが、演技力に関してはどうも欠けているものを感じることが多いです。)、本作は俳優陣の演技力の高さが際立っていました。
カルト的人気を誇る(と私個人は思っています。)島左近についても平岳大がよく演じられていました。お父さんの故平幹二朗も素晴らしい俳優だったけど、岳大さんも素晴らしい役者ですね。
私個人としては西田敏行演じる徳川家康がとても印象的だったのですが、役所広司の徳川家康も素晴らしかったです。CGを駆使してあのたぬき腹を見せるなど役作りも徹底していて、表情の作り方なんかも“たぬきじじい家康”という感じが出ていて良かったです。
有村架純も明らかに演技力が向上したように思いました。
東出くんはやっぱり傑物だなと思いました。
滝藤さんは本作が一番のはまり役なのではないでしょうか?尾張弁がしっくりきてました。
西岡徳馬の前田利家なんか、もう「槍の又左、ここにあり!」って感じで格好良かったなぁ。
壇蜜もドラマで愛人の役を演じた時よりも眼に見えて演技力を上げられたように思います。やはり、妖艶とまでは言わずとも色香を感じます。
音尾琢真の福島正則もこれ以上ないはまり役なのではないでしょうか。あの馬鹿っぽさは緊迫した本作の雰囲気の中で唯一コミカルな要素だったと思うのですが、石田三成からすればあんな感じに思えていたんだろうな、という感じを絶妙に表現してました。なお、本来の彼は領地の知行を増やすなど必ずしも猪武者ではなかったように私は思うことを付言しておきたいと思います。

台詞がお国言葉丸出し+早口で聞き取りづらいという意見もあるかと思いますが、私からすれば「シン・ゴジラ」の方が聞き取りづらかったです。

監督が巨額を投じて自分の撮りたい映画を撮った。まさにそうかもしれません。原田監督の原作クラッシャーぶりはかねがね存じていますが、今回は作品としての調和性がいつも以上に高い作品ではないでしょうか。

再度劇場に足を運ぶ予定です。

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wakemeup