映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのレビュー・感想・評価
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夜空はいつでも最高密度の青色だ
たまに無性にやりきれない日本映画が観たくなる。基本的にあんまりなことが多いけどたまにとても面白いものがあってあれに出会った時の快感は大作ハリウッドを観た時のそれとは一線を画す。
そういう微々たる期待を込めて、あまり下調べもせずにタイトルだけに惹かれて観た。
やっぱり「うーん」といった感想だ。アートを目指したのかエンタメを目指したのかわからない中途半端さ。この方向でいくならもっと登場人物を掘り下げて欲しかった。上っ面しかみせてくれないから感情移入もできない。どう考えても性描写は必要だと思った。
ストリートミュージシャンのくだりも唐突すぎるし、ラストシーンもありきたりだ。
よかったところもある。役者だ。石井監督のキャスティングはとてもうまいと思ったし、それぞれの役者もキャラクターを見事に演じていたと思う。突然死したあいつが1番好きだった。
ざまーみろ!
ナースと建築現場の作業員の恋愛。
鬱屈した思いが吐き出されるような台詞は、かなり青臭くてどちらかといえば嫌悪感の方が強い。ところどころで出てくるストリートミュージシャンの歌も絶妙にダサい。
撮影手法も何だこれ?ってところがいくつか。左目が見えないからって画面の左半分を黒くしたり、4人の男たちが休憩してるときに四分割で映したりしてて絶妙にダサい。
でも観終わった感じは悪くないのだから不思議。いいとは思えないけど嫌いじゃない。
この作品の虜です
石井監督だし池松壮亮だし、まあ観るだろうと思っていたけど、予告編観てなんと無く面白さはよくある単館系の雰囲気ムービーたろうと…思っていたけど。
なんて面白いんだ…!!!面白過ぎて圧倒された。始まってすぐに大好きな大切な映画の1本になるだろうと感じたけどそうなった。で、徐々に進むに連れて作品の魅力がぐんぐん上がって、最後は虜になった。
石井監督の新境地でもあるし、日本映画の新境地でもあるし。少しでも1ミリでも何かがずれたら駄作にもなり兼ねない絶妙なところをスタッフ・キャストの人達が完璧な傑作にしていた。素敵、とにかく。
勿論好みはあるから観る人が観ればつまらないかもしれないしACジャパンのCMを寄せ集めて作ったような奇妙な感覚もあったけどそこがまた面白い。やたら詩的だなあと思ったら原作は詩だった、監督すげーよー(>_<)(そしてだからタイトルの頭に「映画 」ってついてたんだとようやく気付いた)
石井監督の撮り方も作ってる映画の脚本も、本当にリアルで観れば観るほどフィクションには見えなくなっていって、俳優たちが演技をしているのはそうなんだけど本当にその人が言ってる言葉に聞こえてくる、それが気持ち良い。
そして新人の石橋静河。演技どうこう以前に、この映画に新人を使う事は、パンフにも書いてあったけどほんと必須条件だと思う。全然知らない人がやるからこその役でだからこそ成立する映画。(私の大好きな女優の1人原田美枝子の娘だからという贔屓目もあり良い雰囲気の子だと思った)
池松壮亮も新境地だった。この池松君は久しぶりにめちゃくちゃ好きだった。カッコいい役でも無いしいつも通り貧乏の日雇いの役だったし、何ならいつも以上に言動が普通じゃない役だった気がする(普通って何と言われたらあれですが)。今までに見た事ない池松君。新鮮で魅力的だった。見れて良かった。役者が嫉妬しそうな難しい役。
でもインタビューでも池松君が言っていた通り、この男は日本で一番優しい男、と。それにはとても頷けた。思い出しても胸にくる言葉を多々発していた。
ここ最近どの映画観ても帝一の呪縛から抜け出せなかったけど、帝一がA面側で今わたしの中で1位だとしたら、今日のはB面側で1位かも。いや、石井作品限定にすればA面1位が「舟を編む」でB面1位が「夜空はいつでも〜」だな!
日本映画大好き。
映画的な叙情詩の世界。ワン・オブ・ゼムの2人の心の出逢い
「舟を編む」(2013)の石井裕也監督作品。今年、満島ひかりと離婚したというので、プライベート問題もあったかも。前作が「バンクーバーの朝日」(2014)だから、実に3年ぶりである。同作は高畑充希ちゃんのブレイクポイントになった作品だ。
そのひさびさの石井監督が挑戦したのは、なんと"詩集"の映画化である。原作というべきか、人気の詩人・小説家である"最果タヒ"の同名詩集を基にしている。
最果タヒは、"さいはて たひ"と発音する。カタカナ名の"タヒ"は、漢字の"死"を意味するらしい。
映画は、詩集収録の40篇の世界観をモチーフにして石井監督がイメージを膨らませて、脚本を書き下ろし。"東京"というメトロポリスに、2人の男女の存在を浮かび上がらせている。ひとりは看護師ながら、夜はガールズバーで働く美香と、工事現場で日雇い労働でギリギリの生活をする青年・慎二の出逢いと、恋愛のはじまり。
主演は池松壮亮。生まれつき左眼が不自由という障害を持った慎二役である。映像もスクリーンを左右スプリットにして、左側をブラックアウトさせたり。
またヒロインは、石橋静河を大抜擢。彼女は、石橋凌と原田美枝子の次女で本作が映画初主演である。なんとなく、満島ひかりに似ている。ヒトの好みってなかなか変わらないものね(笑)。
そのまんま、叙情詩なセリフが並ぶ。そこに"渋谷"と"新宿"の街並み、夜の繁華街がコラボレートしていく。原作を未読なので、元となった詩篇がセリフにそのまま使われているのかどうかは分からない。ただ、こういった詩的表現のセリフを使う映画は珍しくはないので、比較的ニュートラルに観ることができる。
近い関係の知人との、死や別離が起きるエピソードがあるものの、全体としては何にもない"。都会の人間は、取るに足らない、"ワン・オブ・ゼム"である。そんな"ワン・オブ・ゼム"の2人が心を寄せ合い、そこから前向きな思考を得ようと、あがき続けている。ナイフのような攻撃的な会話、切ない心理描写、単なる"ボーイ・ミーツ・ガール"でなく、そこに生き様が淡々と流れていく。
映画は素晴らしいが、個人的には、東京生まれで渋谷・新宿育ちなので、東京はこんな街ではない。人が多いから寂しいなんていうのは、"田舎者の言い訳"にすぎない。
さらに余談だが、看護師はハードワークだし、夜勤もあるから、ガールズバーの掛け持ちって…どうなんでしょうね。
(2017/5/20/新宿ピカデリー/シネスコ)
大傑作!!
素晴らしい大傑作。
身近にある死という大きな喪失、簡単に孤立しがちな都会。何と苦しい中で我らは生きているのか。
ぶっきらぼうで、変な奴で、お金もなくて、たばこも吸って。
それでも胸がドキドキするんだ。好きなんだ。
朝の光を感じたら、あなたにおはようが言いたい。ごはんを前にしてあなたと一緒にいただきますが言いたい。
まったくの暗闇の夜空も、あなたを美しく浮かび上がらせる青い青い青の集まりだ。
そう、まず『あいたい』と言おう。一緒に歩んでくれる人なのかも知れない。
そうだ、映画の通りだ。喪失を経験して何が悪い。だから俺がいるんだ。
テーマもキャストもスタッフも素晴らしい。石井裕也、同時代に生きる幸せ。
ブラボー!!!
この感覚はなんだろう
自分の見ていた世界がほんの少し今までとは違って見えてくる。
どうでもいい奇跡を期待してもいいんだ、希望なんていうものを信じてみてもいいんだと思った。
観てよかった、と一言では言えないんだけれども何かを感じることができた作品です。こういうものに出会うため、もっとたくさんの映画を見たいと思った。
東京の夜空は
小説の手法のひとつに、表現したいものを直接的な言葉で表現するのではなく、それを取り巻く周囲を描くことによって表現したいものを浮かび上がらせる、というのがある。小説の場合は表現手段が言葉だけに限られているから、映像や音、匂いや触感などは読者の想像力に委ねるしかない。逆に言えば、読者それぞれの自由な想像によって作品が様々な方向に広がっていく可能性があると言える。
映画は総合芸術だから言葉と映像と音で複合的な表現ができる反面、観客の想像力を抑え込むことになる。映画という芸術の数少ない欠点のひとつだ。
この作品はそんな映画の欠点をカバーするために説明的なシーンをなるたけ排除しているように思える。
映されるのは登場人物たちの具体的で恣意的な行動ばかりだ。大した脈絡のなさそうなそれらのシーンがやがて朧気に繋がりながら、個々の人々が無意識に共有する鬱屈のような気分を浮かび上がらせる。それを時代と呼ぶのか、諸行無常と捉えるのかは観客の感性に委ねられる。
主役の二人は、価値観の定まらない流動的で不安定な時代を綱渡りするように生きながら、世界や人類のありようを模索する。
この難しい役柄を池松壮亮はさりげなく演じきった。なんとなく感じる不安や悪い予感を抱えて生きる若者の役は、もはやこの人の十八番と言っていい。相手役として池松に食らいついていった石橋静河のシリアスな演技もそれなりに評価できる。
空気の汚れか、都会の明かりのせいか、東京の夜空に星はほとんど見えない。しかし同じ東京の夜空の下に若い孤独な魂たちが、悩みながら、苦しみながら生きていることに不思議な共生感を覚える。それは多分、喜ばしいことなのだ。
観て良かった。
東京に暮らす日常を淡々と。
こう客観的に見せられると
何とも言えない。
主役の二人が心を近づけてゆくのが
不器用で自然すぎて目が離せなくなる。
偶然に会ったり、笑い合ったり、
並んで歩いたり、そんな場面で泣く。
心を射止められている。
言葉や情報が溢れていても、
大切なものは少なくて、
きっともっと深いつながりがある。
それを見せてくれた。
この映画を好きになった。
死ぬまで生きてやる
詩集の映像化作品。どんな雰囲気になのか全く想像がつかず、楽しみにしていました。
見終わったあとに、優しい気持ちになれる作品でした。石橋さんのナレーションは、絶望を含んだ落ち着いた声で言葉で心に刺さるものがありました。また、石橋さんの涙は心の芯から流れるような純粋さがありました。そして、池松さんの表現力には脱帽です。その場の不安をかき消すようにウワーッと話すときの作り出す空気、何も話さないときの表情、メールなどを見て瞬間的に出す声の純粋さ。
メッセージ性の強い作品だったので、何度も見て噛み締めたいです。
決して後ろは向かない
観終わったあと、世界がいつもより明るく見えた。人ごとに思えないすぐ隣の出来事を見てるかのよう。
普段周りのことなんて見ることが少ないけど、この映画を観終わってからは今までより景色とか空とか色んなものを見たいと思った。
死ぬまで生きる
夜空はいつでも最高密度の青色だ、舞台挨拶完成披露上映会へ。今時の若者の心情とか不安とかがうまく描かれていて面白かった。細かい説明は野暮で間引かれた感じがいい、アズミハルコ観た時と同じ感じで数回観るともっと沁み渡るな。
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