プライズ 秘密と嘘がくれたもの
2011年製作/109分/メキシコ・フランス・ポーランド・ドイツ合作
原題または英題:El premio
スタッフ・キャスト
- 監督
- パウラ・マルコビッチ
- 脚本
- パウラ・マルコビッチ
- 撮影
- ボイチェフ・スタロン
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ラウラ・アゴレカ
-
パウラ・ガリネッリ・エルツォク
2011年製作/109分/メキシコ・フランス・ポーランド・ドイツ合作
原題または英題:El premio
ラウラ・アゴレカ
パウラ・ガリネッリ・エルツォク
軍隊と言う物は国の安全を保持する為にある。なんて、思っているのは、日本人だけなんでしょうね。赤貧に加えて、身を隠す必要があるとは。
また、皆、同じ気持ちなのだと思った。話を脚色しているかもしれないが、本音を別に持っていると言っている。
リアリズムとかけ離れてもなおドラマティックな展開こそが映画と思っている人には、あわない映画。
日常を丁寧に積み上げていく手法が合う人にはお勧めします。
説明はありません。
最初は何が起こっているのか、どうして大人たちはこういうことをして、こういう表情をしているのか。母がセシリアに課す謎めいた約束。わけがわからないままに進んでいく。それはまるでセシリア目線の理解を追体験させられているかのよう。
軍事政権下。
緊迫感の中で大人たちは建前と本音を使い分けて生きていく。
荒れた海、殺風景な砂浜、鳴り響く不協和音。
だけどそんなこと子どもには関係ない。友達との会話、明るく響くはしゃぎ声。喧嘩。たわいのない(今と変わりない)日常。
友達を惑わせる嘘。嘘をついていないのに嘘つき呼ばわりされること。
そしていつしか複雑な様相を見せる。
子どもにとってはなんだかわけがわからないけど、大きなものに呑みこまれて、子どもの心が翻弄されていく。そんな不条理、やりきれなさが切ない。
こんな思いを子どもにはさせたくないと思う。
監督の半自叙伝とな。こんな生活で、監督の感受性が研ぎ澄まされていったのかな?
とにかく一人ひとりの描き方がきめ細やか。心のひだを表現するとはこういうことか。
子どもの演技は、設定だけ与えて自由に振舞わせたかと思うほど、自然。ある映画祭で、セシリア役のパウラ嬢は賞を受賞。
母の表情も、母の置かれた立場を知ってから鑑賞しなおすと、心がキリキリと痛くなる。秀逸。
時折観返したくなる映画です。
販促のキャッチコピー・予告は、この映画の主題からすると捻じ曲げられている。(「お母さんに褒めてもらえない」理由を知ると、みぞおちにズドンと来るけどね)そんな売り方しなければいけないなら、そっとしておいて欲しい。わかる人だけで共有して、隠し持ちたいと思うような宝物的な映画です。
子供は、軍事政権下の監視社会や非民主制についての意味を理解できなくても、世の中の不穏な空気を肌で感じています。セシリアが作文の事を母親に泣いて告白したのも、そんな社会の重たい空気を感じとっていたからです。セシリアは、ただ「(社会が)おかしい」と自分が感じた事を皆の前で言いたかっただけです。裸の王様然り、皆が口をつぐむ社会で本当の事を言えるのは子供だけと言うことを示唆しているようでした。これは、政治的な腐敗が進む今の日本でもリアルに感じています。