「あゝ、傑作!」あゝ、荒野 前篇 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
あゝ、傑作!
寺山修司唯一の長編小説の映画化と話題だが、個人的には現在も公開中の作品をもうレンタルで見れるとは驚き!
期間限定の公開だったのか、元々公開とレンタルが異例のほぼ同時期予定だったのか、それとも劇場版とレンタル版はちょっとバージョン違いなのか分からないが、非常に気になって見たかった作品が見れたので、マンモスうれぴ~!(死語)
前編157分、後編147分。
計5時間で、プロボクサーを目指す二人の男のドラマをじっくり描く。
まさにKO級の、本年度の邦画の中でもベスト級の見応え!
新次。
幼い頃に父親は自殺し、母親に捨てられ…。
悪質稼業に手を染め、ある障害事件で少年院へ。
出所後、因縁ある元仲間に復讐を誓う…。
建二。
日本人の父親と韓国人の母親のハーフ。
母親の死後、父親と共に日本に移り、無職で暴力的な父親を抱えながら、床屋で働く。
乞音と対人恐怖症に苦しみながら…。
何処か似たような生い立ちを持つ二人。
偶然の経緯と誘いから、共にオンボロボクシングジムに入門する…。
菅田将暉とヤン・イクチュン、入魂の熱演!
ボクサー役の鉄板、肉体改造。菅田は10㎏増量、イクチュンは10㎏減量。
菅田演じる新次は、闘志の塊。暗い生い立ちから、周囲は敵と憎しみ。
突き刺さるような目付きと演技。
あの映画にもこの映画にも出まくりで見飽きた感のある菅田将暉だが、『そこのみにて光輝く』『ディストラクション・ベイビーズ』、本作など、ひと度インディーズの力作で魅せる演技こそが彼の真骨頂! もう主演男優賞モノ!
イクチュン演じる建二は、新次とは正反対。
ボクサーを目指すには大丈夫?と思うくらい、内向的で優し過ぎる。
それが弱点でもあるが、一撃必殺級のいい拳を秘めている。
イクチュンの代表傑作『息もできない』では、彼が菅田が演じたような殺気立つ役柄であったが、全く雰囲気を変え、ヤン・イクチュンの幅広く深い演技力に唸った。
替え玉ナシの体を張った試合シーンの気迫は言うまでもなく。
新次のデビュー戦はマジカッコ良すぎ!
建二を「兄貴」と呼んで慕う新次。
対人恐怖症の建二にとっても新次は初めて出来た心許せる相手。
二人の絆もジ~ンとさせる。
この二人は勿論だが、ユースケ・サンタマリアの好演もまた素晴らしい!
元ボクサーで、片目。二人をジムに誘った張本人。
バラエティーなんかで見る彼は高田純次とどっこいのいい加減男だが、役者としては個性的な魅力と存在感を発揮する。
ヌードも辞さない木下あかり、複雑な過去を持つ建二の父・モロ師岡、シコシコやってばかりの高橋和也、トレーナーがハマり過ぎのでんでん、新次とある関係の木村多江、脇を固める面々も印象的。
長丁場を退屈させない岸善幸監督の演出も見事だが…、全てが満足という訳ではなかった。
新次と建二のドラマは申し分ないが、時折挿入されるとある大学生たちの自殺防止集団のパートが…。
また、舞台を2021年に設定し、震災や2020年の東京オリンピック後なども巧みに取り入れてはいるものの、果たして時代設定を変える必要はあったのか…?
新次と建二のドラマは哀愁漂う昭和チックなのに対し、自殺防止の大学生たちはドローンやネット配信や急に現代的になって変な違和感が。この大学生たちも原作通りらしく、現代社会の闇を反映させているのだろうが…、ちとよく解せなかった。
各々の抱える問題、どん底で喘ぎもがき…。
何にも無い荒野のような中で、生きる為に、自分を失わない為に、自分が自分で居たい為に、たった一つのものに死に物狂いでしがみつく。
因縁ある元仲間に闘志と殺意剥き出しの新次。
デビュー戦で新次に差を付けられてしまった建二。
後編の予告編から二人のその後は察知出来るが、高い熱量と重厚な気迫のまま、後編へ!
前編後編一緒にレンタルして来て、すぐにでも後編見たい所だが、『ソロモンの偽証』の時もそうだがレンタルで前編後編一気見する時は、まず前編の感想をまとめ、しっかり余韻浸ってから。
…さあて、後編見るぞ!
地蔵菩薩さん
コメントありがとうございます♪
地蔵菩薩さんのレビューはちょいちょい拝見させて頂いてました。
食指そそられる邦画名作多く、自分もそれらが好きなので。
『あゝ、荒野』は本当にKO級の力作でしたね。
今思い出しても興奮します。
菅田将暉はそれなりに好きな役者だったんですが、本作でその同世代屈指の演技力に完璧にKOされました。
今夏の『アルキメデスの大戦』も非常に良かったです♪(^^)
近大さん🙇はじめまして。何故今迄、近大さんにコメントしなかったのか?悔やんで…遅ればせながら失礼します🙏
…フォロワーさんとか、好きな作品、重なっており、アタシも主に邦画好き(ゴジラも)ですので、今後も宜しくお願いします🙇
…息子でもおかしくない年の、菅田君のファンです😅。
…本作は17年10月、例の友人と朝イチで鑑賞。BRAHMAN がガンガン流れるエンドロールの中、二人で「早く後編が観たい」と言い合い…後編のムビチケ買ってると、手がプルプル震えてました😅
多分、闘争本能刺激され、アドレナリンも出てたはず…同フロアで、ステーキ食べて帰りました🍴ステーキぐらい食べないと、興奮が鎮まらないよって…言い訳を言い合い😅…
菅田君がアカデミー取った時は、TVの前で感涙…恥ずかしい話ですが(笑)