「それはやっちゃアカンやつ。」ブレア・ウィッチ Tottyさんの映画レビュー(感想・評価)
それはやっちゃアカンやつ。
良くも悪くも伝説のホラー映画「ブレアウィッチプロジェクト」の正統続編と謳われる本作。
結論から言えば、POVホラーとしては十分及第点だと思います。(粗製乱造な界隈ですから……)
「手ブレがヒドくて何が起きてるか分からない」「びっくり演出ばかり」という感想はおおよそのPOVホラーに当てはまってしまいますので、そのあたりは単にこのジャンルとの相性でしょう。
ですが、初代が好きな人ほど気に入らないであろう決定的なポイントがあると思います。
そもそも初代の大きな特徴は「結局何が何だか分からない」というところにありました。ここが評価を二分したポイントでもあるのですが、つまりは初代が好きな人はその「分からない不気味さ」こそがたまらないわけです。人知を超えた何かが、どこからか、どうやってかも分からず襲いかかってくる。そこが初代の最も恐ろしいポイントでした。
対して本作は、ついにその「人知を超えた何か」の姿を映し出してしまいます。それも同じPOVホラー「REC」のメディロスそっくりのクリーチャーとして。
これは「ブレアウィッチの続編」としてはやっちゃアカンやつでしたね。結局、あの森で起きた不気味な出来事は全てアイツが引き起こしていたことで、登場人物たちを物理的に襲っていたのもアイツだったと分かってしまうわけです。
ましてや「目を合わせなければ襲われない」という設定も加えてしまう始末。ブレアウィッチ伝説の一部として語られる「壁に向かって立つ犠牲者」に対する説明付けなのでしょうが、そんな後付け設定は必要ありません。
はじめに語ったように、初代の肝は「訳の分からなさ」でした。それをここまで丁寧に説明を加えられてしまったら興醒めです。
しかし唯一良かった追加設定としては、「夜が明けない」という点です。これにより初代では冗長だった昼のパートをカットすることになり全体のテンポが改善。
また、昼パートが無くなることにより、夜の森の圧迫感を否応にも常に味わうことになり緊張が和らぐスキがありません。
ただ、折角のドローンやGPSが全く活用されなかったり、設置したカメラも意味が無かったり、アシュリーの怪我も死因に関係が無かったりと、処理しきれていなかった点もかなりあります。
ジェットコースタームービーとしてはそれなりに良くできているので、ブレアウィッチシリーズを観てない人の方が素直に楽しめるのではないかと思いました。