ミス・シェパードをお手本にのレビュー・感想・評価
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我々は皆、人に語れる物語の主人公たれ!
瀟洒な住宅が並ぶ北ロンドン、カムデンで、黄色いおんぼろワンボックスカーで暮らすホームレスの老女、ミス・シェパードを、なぜ、劇作家のベネットは車ごと庭に招き入れたのか?ベネットが単に物好きな男だったからではない。ミス・シェパードのシビアな人生経験に裏打ちされた頑固さとユーモアが、彼の作家魂を否応なく刺激したからだ。あんな頑固婆なんか放っておけ!というコンサバな自我と、その状況を思わず文字に置き換えてしまう作家の性(さが)とが、つまり主観と客観が格闘する様子を、このジャンルでは珍しい合成を駆使した俳優の1人2役で描いているのは、終始主人公の自問自答方式で展開する映画の方法論としては理に適っているわけだ。一方で、シェパードとベネットは共に社会の倫理を逸脱した者同士独特のシンパシーと、深い孤独を共有し合う仲である。ベネットにとってシェパードとの出会いは、作家の創造力を誘発する千載一遇のチャンスであり、同時に、淋しい自分と向き合い、そこから脱却するステップボードでもあった。ラストで引用されるフレーズに耳を傾けて欲しい。「物語を書くのではなく、自分の中に物語を見出すのだ」。そう、作家ばかりではない。我々は皆、人に語れる物語の主人公たれ!それこそが、基になっている舞台劇の、本作のテーマである。
迷惑なのに、なぜか憎めないおばあちゃん
英国の、カムデンタウンでホームレス生活をおくるおばあちゃんが主役の映画なんて、だれが見たいというのかと思う…ところが、ところが、たまたまさわりだけ見ていたら、引きこまれて、とうとう最後まで見てしまった。
全編におばあちゃんが出ずっぱりで、変化に乏しい絵面(えづら)だけど、彼女の、何かを訴えようとする言葉は、ただのセリフじゃなく、常に、誰かの心を動かす。そして、彼女のめんどうを見るハメになった劇作家のモノローグは、「もうひとりの自分」との会話と言う形式を取り、巧妙に心理を表している。ここが、そこらの自叙伝的映画と決定的に違う演出だろう。
もうひとりの自分は、自宅の中に閉じこもり、誰とも交わらないが、さらっとタネ明かしをしてくれる。それも本当にさりげなく。劇作家がひとり語りを続けるという形式でも、こんな見せ方があったのかと、ちょっと感心した。
音楽の使い方も、実に巧妙だ。劇中、回想シーンに使われる、ショパンの協奏曲はクレア・ハモンドというピアニストが演奏しているが、ミス・シェパードが、戯れに、許しを得て、浄化されて、恐る恐る禁忌を解いて、本当に幸せそうにピアノに触れるシーンでは、見事にピアノを奏でる。まるで、本当に弾けるかのように、ピアノをつま弾くマギー・スミス。彼女の演技力の賜物か、それとも本当に弾けるのか。
謎解きで始まるのに、謎解きの要素はほとんどない。最後に、ちらっとそのことに触れるだけ。でも、彼女を突き動かしていた贖罪の意識は、周囲の寛容によってなぜか放置され、それゆえにミニバンの中で暮らし続けるという奇行をやめることないまま、年老いてしまった。不思議で、奇妙な町だ。そういえば、子供のころ、あんな奇妙な老人がひとりやふたり近所にいたような気がする。
実在していたら、とんでもなく迷惑なんだろうなぁ。でも、どうしても憎めない不思議なおばあちゃん。
余談ですが、カープール・カラオケのジェームズ・コーデンと、俳優のドミニク・クーパーの親友コンビがカメオ出演していてちょっとビックリしました。出番は別々でしたが。
【”修道女であったミス・シェパードが、ボロッチイバンで独りで生活するようになった理由。”彼女を疎ましく思いつつも、寛容な心で受け入れる英国カムデン通りに住む作家ベネットとの関係性を描いた作品。】
ー イギリスが誇る名女優、マギー・スミス主演によるユーモラスな感動作。 ー
■ロンドンの高級街カムデン。
路上に停めたオンボロの黄色い車の中で暮らすミス・シェパード(マギー・スミス)は、とっても偏屈であるが、淑女としての姿を崩さずに生きている。
ある日彼女は、路上駐車を咎められて立ち退きを迫られるのだが、それを見かけた劇作家のアラン・ベネット(アレックス・ジェニングス)は、親切心で自宅の駐車場を貸すと提案するのだが、結局彼女は15年もアランの家の駐車場で生活するようになる。
<感想><Caution!内容に触れています。>
・先日、別の映画のレビューにも書いたが、私は英国BBC制作の映画が好きである。だが、この作品は知ってはいたが鑑賞出来なかった。
・今作が面白いのは、アラン・ベネットが双子の様に描かれてる手法である。
ー 劇作家として、冷静にミス・シェパードを観るアランと、彼女を気遣うアランが同画面井に出演し、夫々のミス・シェパードに対する見方、考え方を述べる姿。-
■ミス・シェパードが、修道女としてアルフレッド・コクトーにピアノを習っていた過去。そして、そんな彼女がある日、運転していたバンで、三差路でオートバイを飛ばして来た若者とぶつかり、逃げてしまった過去。
だが、彼女はそのバンに乗って修道院を追われつつ、一人生きるのである。
・ミス・シェパードはそんな自らの過ちを悔いつつ、必死に生きて来たのである。
ー 彼女が、最初に路駐していたカムデン通りの家から流れて来る音楽に”五月蠅い”と言って居を変えるシーンは、彼女の過去のピアノを習っていた事との決別であろう。-
・そして、彼女が新たな住処としてアラン・ベネットの家に、ボロッチィバンを停める姿。
ー 何だかんだ言いながら、ミス・シェパードの事を気に掛けるロンドンの高級街カムデンの人々の姿。その筆頭は当然、アラン・ベネットである。-
<今作は、過去の事故を悔い乍ら、ミス・シェパードの人間関係や物欲にとらわれない自由な生き方が印象的な作品であるとともに、彼女を見守る英国ロンドンの高級街カムデンに住む人々の善性在る姿が、沁みる作品である。
今作が実話ベースであることも、余韻に浸れる一因であろう。>
マギーの演技が光る
マギースミスが好きだから観ました。
なんだろう…先ず日本語の題名と映画の内容が合っていない。
作品自体は悪くないが、アラン役がザ•クラウンのエドワードを演じていたため今作に馴染むのに時間がかかりました!笑
宗教に封印された人生
実に芸術家的な性格であったのに、宗教が才能を封印してしまった人生。事故によって強迫観念も相まって祈りに執着して行く人生。悲劇に仕上げられた物語かも知れないけれど、生きることの妙に思い入れのあるコメディ仕立てになっていて、いまの冷たく白けたご時世に少しの温かみを味わった。彼女が望んだカップ半分のコーヒーの様な温かい物語だった。
邦題がずれていると思う
贔屓目に見ても、想像した「お手本」要素がないというのが見終わった感想。英題通り、「レディー・イン・ザ・ヴァン」で十分かと。
イギリスらしい言い回しとかユーモアは楽しめた。ホームレス役のおばあさんの演技は深みがあってよかった。
起こったことにばかり目が行くと、見も蓋もない、ばあさんの悲劇。それを洞察深く、思慮深く見つめたのが本作品。見る人によっては、つまらないだろうなー。
想像よりは面白かったし結局最後まで気になってみちゃった どこか行き...
想像よりは面白かったし結局最後まで気になってみちゃった
どこか行きたいとか悲しいとか感情は特にないけどこういう人もいるんだなってかんじ
人生何が起きて誰が何をしているかなんて本人でさえも気づいてなかったりその思いは間違っていて勘違いだったりすることがあるなと思った
実際のお話。だから何的。
昔映画館で予告編だけ観て面白そうだなと思ったまま、今頃思い出し鑑賞。
劇作家ベネットの庭にオンボロワゴンにて15年住み着いたお婆ちゃんシェパードの話。
実際のお話らしいのだが、日常にて偶然起きた話でありつつもストーリーがパッとしない為、面白みが無い。
シェパードお婆ちゃんの過去も明らかにされていくのだが、お涙ちょ〜だい話でも無くオンボロワゴンに住み着いてなければ、ただの夢破れたお婆ちゃんである。
ホント「だから何言いたいの?」的。
タイトルにもある「お手本」とは「何が何でも自分を貫き通せ!」って事かい?
これが街で愛された感動のお婆ちゃん話だったら良かったのにと、現実路線まっしぐら映画だった事に観た後後悔しかなかった。
マギー・スミス様の魅力の一端
風変わりなホームレスの女性と、秘密を抱える劇作家の不思議な絆を描いた作品。
デイム・マギーのおかしなお年寄り演技がすごい。はたで見てるぶんには笑えるけど、身近にいたらきっと相当ムカつく婆。それでもどこかチャーミングで、近所の住人は彼女を放っておけない。主人公アランのとっちらかってしまっている精神状態の表現も面白い。彼の秘密もほんの少し匂わされるだけで、決定打というか、想像の域をでない描き方もいい。ミス・シェパードのバンには、生きるよろこびと悲哀がたっぷり詰め込まれている。
マギーだから、見ごたえある。
もし家の敷地内に、こんなおばあさんがやってきたら・・・。考えたくないかも。
劇作家とシェパードの奇妙な15年間。「いじわるばあさん」っぽいのに、周囲の人たちは彼女と微妙な距離を取りながらも、無下にしない。「遠くの親戚より、近くの他人」かな。
なぜシェパードは車の色を、いつも黄色にするんだろう?たぶんイギリスや神、その辺につながってるのかな。
マギースミスならではの役だったと思います。
みんな人生を抱えて生きている
ロンドンで新しい家に住み始めた作家が主人公、家の前の通りには車で暮らす老婆(マギー・スミス)がいた。
ほとんどホームレス状態の老婆との交流が始まり、次第にこの女性の可哀そうな人生が明らかになっていく。
近所の人や役所の人は、根っこではこの女性を気にかけているのが心地いい。
こんな出会いがあるから人生っておもしろい
これがほぼ実話だというから出会いっておもしろいと思う。観てるだけで臭ってきそうなマギー・スミスの老婦人はその個性も強烈だったが、バンでの生活に至るまでの人生が明かされるにつれ単なる変わり者の偏屈なお婆さんと疎ましかったのが、見方が変わって愛おしくさえ思えてくる。劇作家を演じた俳優も素晴らしかった。なぜこんなお婆さんを庭に住まわせるのかと信じがたかったが、脚本のネタになるということ以上に彼女の人生に惹かれ自分の分裂した人生の答えを求めていたのかもしれない。物語の終盤でいろんなことが明らかになり、清々しい気持ちになれた。また舞台となる北ロンドンの土地柄も素敵でご近所さんがいい味出してる。
イギリス人の寄付の精神に感服
文化人が多く住むロンドンのカムデンタウンで、老婦人が古いバンを路上駐車して暮らしていた。映画はそこに越してきた作家アラン・ベネットと老婦人との関わりを描く、ほぼ実話のコメディ。
車の周囲は古いごみ袋あり、臭いあり、時には通行人に嘲笑、迫害されたりしていたが、近所の人は黙認し、一線を引きつつも時に親切にするが、感謝どころか憎まれ口を叩かれる。絶対ありがとうと言ってもらえないのを薄々わかっているのに、庭で取れた洋ナシを差し入れたり、クリスマスには子供がプレゼントをあげたり、その慈善の精神がいかにもイギリスと感じさせられた。
主演は日本でも有名なマギー・スミス、2015年制作でゴールデングローブ賞ノミネート作品なのに、公開が遅すぎる!
語り部の自由
脚本家とホームレスおばあちゃんの日常を綴った話
「これはほとんど実際の話」で始まる物語、語り部は脚本家なので回想録の様だが、少し異色である。
なぜなら語り手が二人いるのだ。実際行動に移す自分と脚本家として机の前にいる自分。いきなり二重人格で話が語られる。
主人公は自問自答、葛藤しながら生活している男なので実際の出来事とフィクションの出来事、妄想が入り混じっている。だが決して支離滅裂な訳ではないし視点もしっかりしているので見ていて面白い語り口だと思った。
そんな主人公の所に転がり込んだ正体不明の偏屈な老婆、こちらも物凄いキャラクターなので興味が湧く。話が進むにつれて正体が分かってくる展開も気持ちがいい。
マギー・スミス演じる老婆は一見意地悪、自己中なのだが、何処か気品があり謎めいている所が魅力的でいい味を出していた。
主人公の好奇心と観客の好奇心が上手く一致しているので違和感のない展開で少しづつ距離を縮めるのが心地いい。
ホームレスゆえの臭いの描写や主人公のうっすらゲイぽい私生活も優しめに表現しているので全体的に嫌悪感の少ない作りだったのも好感がもてる。
下町の雰囲気の良さ、ご近所さんとの会話などの一つ一つが丁寧だし、不思議な関係の二人をいつまでも見ていてくなる、そんな作品だ。
実際自分が体験するのは嫌だが、こんなホームレス近所にいたら面白いかもなと思ってしまった。
人間それぞれに生まれてから今までの歴史が有るのだから、どんな人でもドラマが有るのだと改めて思った。
最後は主人公が語り部としての特権を使って締めくくるのだが、とてもいい終わり方だった。
この様な締めくくりは初めてだったので驚きと幸せが同時にやって来て見ていて新鮮だった。
ロンドンの片隅で起きたちょっと不思議な話、興味があるなら見て損は無いと思う。
劇中セリフより
「人生に足踏み期間なんて無い、時が人を動かすのだから」
止まっている様でも、実際は何かしら得ているものがある
行動に移せなくてジッとしていても、案外力を蓄えるための期間だったり、次の一歩に必要な大事な時なのかも知れない。
モヤモヤして動きたくない時、時間を無駄にしたと思った時は、この言葉を思い出そうと思った。
マギー・スミスが好演している……だけ
主人公・シェパードの不幸・複雑な過去について一応は触れられるものの,現在への結びつきについて特段掘り下げられるわけではない。という点では,「幸せなひとりぼっち」と対照的。したがって,シェパードの偏屈な奇行を面白おかしく描くのに留まる。よって,ミス・シェパードの何処を取ればお手本になるのか,理解に苦しみ,苦しみ,悶絶しそうになる。
フランス語ができる? ピアノが弾ける? その類いは,ストーリィに加えられたちょっとしたスパイス。所詮,日本でも見られるホームレスと五十歩百歩。
本作のチラシには数々の著名人が賛辞を寄せているが,そういう作品こそ疑ってかからなければならないという教訓は得た,と言えよう。
実に英国的
隅から隅まで、実に英国的な映画だと思った。
主役はミス・シェパードでなく、アラン・ベネットの方。
このアラン・ベネット役がすごくよかった。
映画が匂い付きでなくてよかったと、心から思う。
個性豊かな隣人たちも、良かった。
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