「2017劇場映画トップ3に入れる映画!」ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 レインオさんの映画レビュー(感想・評価)
2017劇場映画トップ3に入れる映画!
原作を読んでからの観劇。
一言で言えばとても暖かい話だった。
もちろん原作、脚本も元々とてもいいが、
滝田監督の腕もすごかったと!
原作と比べたらかなりシンブル化されたストーリーだが、
その工夫した加減がちょうどよかった。
小説のいい映画化って、多分小説を遥かに超えるものが成功だというより、人が小説読んだ時に想像したものを具現化しつつ、人に映像自体で視覚的に作品の面白さをさらに魅了させるというものの方が成功かも。
だからこの映画は、凝った内容とスタイルで、作品の添え物でありながら、作品の素晴らしさ、暖かさをきちんと伝えてきたものだと高評価できるかも!
俳優さんはかなりのハマリ役で、とてもよかった。
ニノの料理もちょんとできた上での演技は、説得力も上げた。
カメラワークも意味深かった。
気づいたところ、好きなところ三つある。
①山形直太朗がメニューに火をつけたシーン。
1回目の鑑賞で散々泣いた!
その前に料理にも火を付けたが!。
ちなみに幸さんもお店の火事で亡くなった。
わざと「火」を表象するってのは、
やっぱり火は、料理を作り、人を幸せにするものでもあって、一瞬で全てを毀すものでもあるという両面性を持っているだろう。
山形の理想も、火のメタファーのように、幸せを生み出すものであるようなはずだが、予想もせぬ瞬時に灰になる。
山形さんは料理人として、結局自分でレシピを燃やすという行動に、観客も悲しくかんじるのでは。
②幸さんが火に飛んで行ったその瞬間、幼年の充と青年の充の顔が揺れのカメラでクロースアップされ、しかもオーバーラッピングされる。
この加工で誰でも何があったか分かるだろう。
とてもカメラの力を見せたところだった。
3回目の鑑賞でかなり充に感情移入し、後半ニノの演技の繊細さに心うたれた。
③最後に充がレシピをめくるシーン。
最初に彼の視線は千鶴の写真に止まったが、次に山形の写真を充のpovショットで何回も繰り返しで提示した。このpovショットの繰り返しはかなり深意のあるところだろう。
充は初めて山形を、今まで自分がたくさん話聞いた人を、目にした。彼は、もはや山形の話から大きくインパクトを受けた、今までの考えも変わった。だから、彼は山形を見つめていた。
麒麟の舌を持つ二人の男が、初めて何十年も経て、対話できたような気がした。
美しい料理も含め、監督のカメラも、美しくて、そして力強かった。
最後に、歴史の捉え方にも、私の賛成できる方でもある。やっぱり満洲ってのは、理想であって、また不切実の理想だからこそ、陰謀、謀略も潜在していた。
もしかしたら、全てを導いていくのは、とある必然なのかもしれない。
帝国日本の侵略戦争をも、色々考えさせられる映画だろうなー
唯一残念なところは、満州国のランドスケープに色彩が強すぎるじゃない???
これまでずっと古い映画にあるモノクロの「満洲」を見てきたのになあ〜
そんなに鮮やかな満洲表象は、どう考えても不自然で、個人としては不慣れしかない。
山形と千鶴の生活、現代に近い??
ミザンセンにもうちょっと考えを?!