劇場公開日 2017年5月13日

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「壊れそうなメイザーの器を観る」潜入者 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0壊れそうなメイザーの器を観る

2024年2月6日
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鑑賞方法:DVD/BD

実際の覆面捜査官の回顧録を元にした実話物なんだけど、ここで大事なのは、覆面捜査官はメイザーとその相棒だけだと勘違いしていることだと思う。
捜査会議に二十名ほど、二人一組なのだから単純に十組くらいの覆面捜査官が本作戦のために潜入しているのだ。もちろんメイザーたちのチームが知らないチームの捜査官だって捜査している。
私たちはメイザーの視点での潜入しか見ていないからメイザーだけが頑張ったように思えるだろうけどさ。

それで、捜査がグダグダだというレビューをいくつか読んだけれど、アメリカってのは潜入捜査が大好きだったから、全米に大量の潜入捜査官や内通者がいたわけ。
それがチームごとに勝手に作戦をやってるものだから、FBIが潜入のために作った麻薬組織に別のFBI捜査官が潜入して、FBI同士で捕物帖なんてバカみたいなこともやってたの。
本作がグダグダだって?冗談じゃない。アメリカをバカにするなよ。本当のアメリカの捜査はもっとグダグダだよ。
映画的にグダグダなのではなくて、映画的に美化し過ぎなくらいなんだよ。

それで内容については、今誰と会っていて何をしているのかわからない場面も多かったけど、正体がバレたら命が危ない、バレなくても殺されるかもしれないという緊張感は最高だったね。
一言でも間違えたら殺されるってセリフ通り、嘘に嘘を重ねていく危うさは呼吸を忘れるほどのハラハラを届けてくれた。

死の影に精神が疲弊していくメイザーは、更に、妻からの視線や同僚の叱責、捜査対象からの信頼などにより、もっともっとすり減っていくことになる。
メイザーの精神の器が溢れるのが先か、本作戦が終了するのが先か、今にも壊れそうなメイザーの危うさも醍醐味の一つだったよね。

余談だけど、トム・クルーズ主演の「バリーシール アメリカをはめた男」を観ていたから、本作の中にバリーシールが出てきたのは面白かった。
それだけでもエスコバルを追っていたのはメイザーたちだけではないとわかるしね。

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つとみ