ひかりをあててしぼるのレビュー・感想・評価
全8件を表示
最後まで書けなかった小説
実際に起きた事件をモチーフにした作品
事実は小説より奇なりというが、その「奇」の部分を「事実」の背後に託している。
結局、
描き切られていないことが、トモミとコウヘイの人間像に迫っていないことになり、わからないし共感できないことが起きてしまっている。
モチーフに使った事件は存在するが、背後の事実が制作者の想像だけのような気がする。
冒頭に、実際の事件とともにいまだ存在するマンションに触れているが、この意味も不明だ。マンションが何か悪いことをしたのでしょうか?
タイトルが言いたいのは、事件に光を当てその真実を絞り込むとでも言いたいのだろう。
作品は、
未だ捕まらない犯人だと思われているタクミが、トモミの妹エミを訪ねることと、彼の知る事実を彼女に伝えることが物語となっている。
簡単に言ってしまうと、トモミもコウヘイも親の虐待を受けて育った。
トモミは虚栄心の塊のような人間になり、コウヘイは彼女の傲慢な態度に暴力を振るったことが起因し、父と同じ振る舞いに溺れていく。
当初コウヘイにはお金がなかったが、妻の資格教育のおかげなのか、裕福な暮らしを手に入れた。
コウヘイはトモミを支配しお金を手に入れたが、殴られて笑うトモミのおぞましさに気が狂いそうになる。トモミへの暴力が自分の心を苦しめていく。
トモミは、
弁護士だとうそぶいて結婚までしたのにお金がないことが許せない。夫に再教育しながら自分は遊ぶ。
そしてとうとう夫がキレる。一度キレればそのタイミングはまたすぐに来てしまう。
しかしお金に困らないのが一番なのか? トモミは殴られても薄ら笑いを浮かべる。このことがDVをエスカレートさせてしまう。
冒頭と最後のシーンは、幼い時のトモミとエマだ。
父から隠れるようにクローゼットの中にいるが、見つかってしまう。
トモミがクローゼットの中にいるのはDVから逃げるためだ。
しかしその描写だけでは何もわからない。
トモミの人間性が描かれていない。
「いまさらどうしようもないけど、うれしかった。ありがとう」
これは幼い時に妹がトモミを庇ったことがあった思い出に対する言葉。
しかし、意味が解らない。サイコなのだろうか?
でもこれをサイコにすれば物語はタイトルから破綻してしまう。
彼女を救おうとしたタクミ同様、わからない。
その後のタクミの思考能力もわからないが、そもそも出頭する直前にエマに事実を伝えるが、「何でこんなことを私に話したの?」という彼女の質問に答えないことが最大の謎だ。
つまり、プロットが細部まで詰められていないのだ。
これは最後まで書けなかった小説と似ている。
タイトルと真逆
結局、何もわからない。
そして最後にタクシーに乗っているトモミ。
「お客さん、なんか、臭いんですが」
つまり彼女はコウヘイの頭部を持っているのだろう。
だから何? やっぱりサイコなの?
ということです。
DVバランス
マウント取っていた智美が逆に暴力を受入れるようになっていく過程・・・ここがキモだと思うのに、その転換点がよく分からなかった。この心理変化が上手く描けていたら相当怖いホラー映画になっていたけど、主従入れ替わりという発想は面白かった。出会いの合コンの場では「法律事務所で働いている」と、本当か嘘かわからなかったのも残念なところ。いつの間にか巧の年収の倍になった?その仕事内容もわかんない・・・単なるホストか?
個人的には夫婦の愛憎劇の様子より、危機を救う騎士から傍観者に転落した巧の心理面のほうが好みだった。そして幼い姉妹がクローゼットに隠れていたプロローグとエピローグ。さすがに子どもに対する虐待は描かれてなかったけど、どこかマゾヒスティックな面が智美に芽生えたのだろうか・・・ここも興味深いところなんだけどなぁ・・・
人の汚さとかDVとか。 全体的に気持ち悪かった、殺してからの女優の...
人の汚さとかDVとか。
全体的に気持ち悪かった、殺してからの女優の怪演は良かったけれど。
女性は恐い
旦那が嘘を言って結婚した夫婦。子供がお腹にやどったが残念ながら生まれなかった。嫁さんの協力もあり、旦那は、無事に就職できた。仕事は、順調だったが、ひょんなことから、旦那がDVを始めていき、家庭が壊れていくという内容だった。
DVをふるう旦那の影響で、嫁さんがおかしくなっていくという内容だと思って観ましたが、実際は、違いました。
途中で、嫁さんがおかしくなっていくのは、自分を守るための防衛本能なんだろうなと思いました。作品の途中で、「誰が正しいのかがわからい」というようなセリフがありましたが、本当だなと思いました。観終わっても、だれがまともなのかわからない作品でした。
しかし、愛情は恐いなと改めて思いました。愛情がなくなったら人間はなんでもするんだなと思います。
女という生き物
予備知識なく観たが、アメリカの映画祭でホラー作品賞をとっただけあって怖かった。
ただ、その怖さはじわじわくる感じだった。
普段、知っている知人の女性が実は映画の主人公のような女だったら。友達が暴力を振るう男だったら。
相手が自分に見せている部分なんて、実はその人の1部にすぎない。この作品を見て改めてそう思った。
ヒロインの派谷恵美の笑顔がすごい。この笑顔を見るだけでも、映画を見るに値する。
あの笑顔を見せられた時に自分はどうするのだろうか。
引きずる作品ではあったが、観てよかった。
映画祭で主演女優賞をとったのも納得の演技だった。
ミニシアターでこういう作品に出会うと得した気分になる。
観客に女性が多いのが、意外でそして恐ろしかった。
彼女たちの中にも、共感する部分はあったのだろうか。
解らないが、ちょっと考えてゾッとした。
影響力の強い映画だと思った。
最後まで書いて、哀しい愛の物語だとも思った。
出演者の熱演に拍手を送りたい。
俳優の演技が本作を映画にしているから。
派谷恵美の一人勝ち
実際の事件をモチーフにしているものの
実話を忠実に再現しているわけではないようなので、
インスパイア・フィクションどまりかもしれない。
にしても、派谷恵美の不気味っぷりが素晴らしく、
上映後の舞台挨拶でも、役を引きずりちょっと恐怖を感じるほど。
今年後半に公開されたシネコン系作品の酷い有様に愕然とする中、
こういうミニシアター系作品が小粒ながらに良作を残してくれていることが唯一の救い。
もし声優が主演女優賞を取れるのであれば「この世界の片隅に」の「 のん」が取るべきでは!?と、思っていたが、恐らくシステム上そういう受賞はないであろう...。と、考えた時に、派谷恵美は主演女優賞与えたいレベル。
受賞せずとも、ノミネートくらいはしてあげてほしい。
映画の内容ほどのところまでは流石に行かなかったが、
私の友人で結構近い感じの関係を築いていたカップルを知っているだけに、ちょっと間違えると短で起こり得る話だと思ってしまい更に恐怖。
人と人との化学反応とタイミングを間違えると、こういうことって起こってしまうんだよね、人間界って...。
そして、このテの映画にああいう「主題歌」要らないでしょう...
ああいうところで変に商業作品のマネしなくていいのに...
どうせなら作品中のサントラやSEももう少しこだわって欲しかった。
罠
バラバラにされた遺体が見つかるところから回顧録的に始まる、実際の事件を元にした話。
最初は暴力的な旦那かと思ったら実は…何とも狡猾で恐ろしくおぞましく、ホラー映画をみているような感覚になる。
鑑賞前、実際の事件のことはあまり覚えてなかったけど鑑賞して色々な背景を思い出した。
風俗で働いていて客に家賃出させていたこととか、汚部屋だったこととか、夫婦共に浮気をしていたこととか、勝手に堕胎したこととか、DVと見せる為にシェルターに避難したこととか、死体を遺棄するのも億劫がったこととか、捜索願いやリフォームの隠蔽工作のこととかは作中には詳しくかかれておらず、事実よりマイルドにしているのが少し残念だけど、テンポや尺を考えたら良いところかな。
全8件を表示