「【”真の善人とは” 頑固で偏屈だが、”筋をきっちり通す”男の人生を通じて描き出した作品。ヒューマン・コメディの優秀作でもある。】」幸せなひとりぼっち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”真の善人とは” 頑固で偏屈だが、”筋をきっちり通す”男の人生を通じて描き出した作品。ヒューマン・コメディの優秀作でもある。】
ーこの作品が、クスリと笑うシーンを塗しながらも、観ている側の心に深く染み入るのは、
・”偏屈だが、筋をきっちり通す”男、オーヴェの人生が、若い頃からしっかりと描かれ、彼の現在の気質、行動の理由が見ている側にきちんと伝わるからだろう。
・オーヴェの根本にある、善性、正義感がどのように育まれたのか、何故彼は孤独で偏屈な男になったのかが、良く分かるのである。-
<以下は、ネタバレを含むので、鑑賞前の方はここで一時、止めて下さい。>
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オーヴェは59歳。勤続43年の会社も馘になり、亡き妻ソーニャの遺影に語りかける日々。
だが、街の規律を守るための”見回り”は欠かさない。(で、変人、偏屈と言われてしまう)
一切、笑わないし、口癖は”バカめ!”である・・。
■切なくも、可笑しきシーン
・オーヴェは亡き妻の遺影に”寂しいよ・・・”と語り掛け、首を括ろうとすると、ペルシャ人の夫婦(パルヴァネ&パトリック:特にオーヴェが”率直に話すパルヴァネと交流を深めていくシーンの素敵な事。)が隣家に越して来て、車を上手く車庫に入れられず、”憮然”とした表情で車庫に入れてあげるシーン。
・で、漸く首を括ろうとすると”ピンポーン”と呼び鈴が鳴る・・。(可成り可笑しい・・)
その後も、ライフル自殺しようとすると、”ピンポーン”・・とても、可笑しい。
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若きオーヴェとソーニャの列車内での出会いの素敵なシーンや、オーヴェが父譲りの正義感である事が描かれる。-上手いし、良い。-
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且つて、共に町の規律を維持していたルネは重度の車椅子生活。妻、アニタはルネを施設に入れようとしない・・。
そして、アニタはオーヴェには色々と頼みごとをする。ブツブツ言いながらも手助けするオーヴェ。(同様のシーン、多数あり。町の人々がオーヴェを頼っている事が良く分かる。良いなあ。)
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■”母国スウェーデン愛溢れる”シーン
ルネの愛車はボルボ、オーヴェの愛車はサーブ。モデルチェンジの度に買い替える二人だが、(楽しい競争)ある日、ルネはBMWを購入し、決定的に決裂するシーン。
-今作はスウェーデンで大ヒットした作品だが、設定が絶妙に上手い。ルネ、BMWはなあ・・。
■”白シャツ”との対峙シーン
小役人、”白シャツ”を敵視するオーヴェの姿。強引にルネを施設に入れる事に対して・・・、と思っていたら真実が後半描かれる。
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そして、子供が出来たソーニャとのバス旅行で、大変な出来事が起きるが・・。
脚が不自由になっても、教師になる夢を諦めないソーニャのために奮闘するオーヴェの姿。
ーもう。ここら辺から目が潤んでくる・・。ー
ソーニャのニッコリ微笑んで口にする言葉が素晴らしい。
”今を必死に生きるのよ・・”
そして、ルネを施設に引き取りに来た”白シャツ”への強烈な一撃。
だが、オーヴェはその後、肥大した心臓のせいで、昏倒。
目を開けると、パルヴァネが優しく微笑みながら、
”本当に死ぬのが、下手くそね・・”
パルヴァネの3人目の子供も含めて、久しぶりの笑顔を浮かべて遊ぶオーヴェの幸せそうな姿・・。
<オーヴェが何度も自殺に失敗する理由が良く分かるし、(ソーニャの言葉・・)パルヴァネはどう考えても、ソーニャの分身でしょう・・。
”大きな存在は”、”真の善人”の事をいつも優しく見守っているのだ。
スウェーデンから届けられた、とても素敵な物語である。>