「つまり敵は、某大統領ですね。分かります。」マグニフィセント・セブン さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
つまり敵は、某大統領ですね。分かります。
キャッチにあるように、
七人の侍、荒野の七人の魂を、受け継いでいる。か!?
『マグニフィセント・セブン(2016)』
原題 The Magnificent Seven
※若干、ネタバレあり。
(あらすじ)
悪徳ブラック企業バーソロミュー・ボーグに目を付けられた町、ローズ・クリーク。
目の前で夫を殺されたエマ(ヘイリー・ベネット)は、ただただ降伏しようとする町の男達にかわって、自分の有り金はたいて賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)をはじめとする、凄腕ガンマンを町の用心棒として雇うことにする。
皆さんご存知、"七人の侍"のリメイクである"荒野の七人"。の、更にリメイクの本作です。
最近、"七人の侍"を久々にリピートしたんですが、面白いですねー。
面白いって言葉で片づけちゃいけない気もしますけど、好きなんですよねー前編が。
個人的にはクライマックスの雨と泥の中の壮絶な戦いより、前半部分の仲間が1人、2人と増えて行く過程の方が好きなんです。
志村喬さん演じる島田勘兵衛が農民に見初められ、"金にも出世にも"関係ない、ただ御飯がお腹一杯食べられるってだけだぞって、仲間を増やしていくとこがいいんですよね-。
義侠心。男気ですよね。
それぞれの登場人物の魅力(能力)が、自然に上手く引き出されるくだりが好きです。
剣の腕だけではなく、人柄でムードメーカーとして必要とされる千秋実さん演じる林田平八。
三船敏郎さん演じる菊千代が、ようやくそのキャラを生かせる瞬間とか。
誰にだって1つは、良いとこがあるぜ。っていう。秀逸でしょう!
"荒野の七人"でも、この仲間が増えて行く過程を大事にしていたように思います。
ただし、今となっては笑ってしまう過剰なかっこつけた演技とか、舞台はメキシコの村ですが、なんだか農民(村民)がみんなおろしたてのお洋服で小綺麗だったり、添え物的なヒロインと一番の若手のアメリカ的なハッピーエンドとか、何よりびびるのは"七人の侍"のラストの名台詞を、何故か農民側から言い出すとかとか……。
今となってはですよ。ちょwこ、これは!?と思うシーンはございます。
けれど、「御飯がお腹いっぱい食べられる&20ドル」という、利益より自分の正しいことをやる!っていう、私が"七人の侍"で一番痺れるところが、確かに受け継がれている部分はあります。
さっき過剰と言いましたが、でもやっぱ、ユル・ブリンナー、スティーブ・マックイーンかっけーもん。
笑っちゃうくらいかっけーもん。
死に方おかしいけど、チャールズ・ブロンソンも、コバーンも存在感がすげーもん。
ブルゾンちえみさんが、"アメリカにかぶれてる芸人のプレゼン"で、「(アメリカ人の仕草が)笑っちゃうくらい格好いい。100点」と仰ってましたが、やっぱ"荒野の七人"にはそんな格好良さがある。
なんだかんだで、ラストのユル・ブリンナー演じるクリスの「アディオス」、軽く頷くマックイーン演じるヴィン、そして「アディオス」と応じるホルスト演じるチコ。の、ラストシーンがいいもん。
また農民から言い出すあの名台詞に違和感あるも、農民とガンマンはやっぱ相容れない存在なんすよ。と言う、クリスのやや悲しげな笑顔とか。
そこも、時代に流され居場所をなくした侍達の哀愁に似て、七人の侍を受け継いでるように思います。
さて、本作。
七人の侍の敵は野武士。
荒野の七人の敵は強盗団。
今回の敵は、金に物言わせる大企業です。
時代ですねー。
対する我らがマグニフィセント・セブンは、デンゼル・ワシントン演じるサムがリーダー。
そういえば"黒豹のバラード"っていう映画で、西部開拓時代のカウボーイの3分の1は、黒人だったというくだりがありましたね。
解放された奴隷は、賞金稼ぎなんかで食べてたようですよ。
他のメンバーは、アジア人(韓国)、インディアン、メキシコ人&白人。
ええ、まるで人種のるつぼ、アメリカの縮図ですね。
なので資本主義国出身者は、死ぬんです。
生き残るのは、所謂マイノリティー(気遣いが!時代ですねー)。
敵は大企業であり、資本主義であり、トータル敵って、ビジネスマン大統領のあの方ですよね?
ええ、分かります。
また、"七人の侍"と"荒野の七人"ではあくまで添え物的な存在だったヒロインが、今回は自ら銃を持って、皆を率いて戦います。
やっぱ、時代ですねー。
ヘイリー・ベネット良いですよ。そして強気な女=やっぱ赤毛なんですね!
ただ私が"七人の侍"で一番好きな痺れるポイント、本作ではかなり薄いと感じました。
なんでしょう、義侠心なんか嘘臭いんですかね。
今時、流行らないんすかね。
メンバーは利害の一致で、仲間になっているように思えました。
しかも簡単に見つかる。
決定的なのは、サムの動機です。ラストに明かされるサムの生い立ち。
義侠心もへったくれもねーな(笑)!!
確かに銃撃戦は見所がありますが、町を守るってダイナマイトでドッカンドッカン破壊したり。ま、守るんっすよね?
でもダイナマイト、ガトリング砲が登場してきて、ガンマンの居場所が侍並になくなる。
よろしく、哀愁。
って思いきや、ちがーう!
おもてたんとちゃう!
アントワン・フークア監督、嫌いじゃなかったのになぁ。
デンゼル、大好きなのに。
"グローリー"で背中をむち打たれるシーンを観て、惚れたのに。
あ、"モ'・ベター・ブルース"とか"青いドレスの女"が好きですねー。
なのに、途中で意識落ちました!す、すみません!
私の好きな男気ではなかった。
あ、日本人が好きな、義侠心じゃないような気がする。
だから、興業成績振るわないんじゃね?
人種のるつぼメンバーであるからこそ、色々と配慮した脚本になって、結果ぬるくなったんでしょうか。
もう、"荒野の七人"並に、笑っちゃうくらい格好つけた映画で良かったのに。
が、しかし。
エンドクレジットでエルマー・バーンスタインが流れて、ようやく加点ポイントが見つかり良かったです。