「人生でもっともガッカリな映画」カーズ クロスロード むうむうさんの映画レビュー(感想・評価)
人生でもっともガッカリな映画
カーズの第一作は世代間の対立・主人公のマックイーンの葛藤と成長・そして感動のクライマックスと、王道のストーリー展開ではあったが見ごたえのある内容だった。カーズ2で主人公がかわり、残念な子供映画になってしまったが、本作はマックイーンが再び主人公となり、大クラッシュとスランプを乗り越え、新たな新世代ライバルたちに復活をかけて再挑戦するストーリーだと知って、ワクワクしながら映画館に行った。ところがである。突然出てきたトレーナーのお姉ちゃんが、大先輩がマックイーンのために伝授した秘策を次々とパクり、最後には「どうやってこいつに勝つんだ?」というようなすごい新世代ライバルをあっさりやっつけてしまう。この映画は一体何を伝えたかったのか、さっぱりわからないストーリー展開だった。本当に心から白けたし、大好きだった第1作のマックイーンの評価すら下げてしまいかねない、史上最悪の映画だった。
「才能ある後進に道を譲るのも勇気」みたいなことを書いているレビュアーもいたが、とんでもない勘違いである。後進に本気で道を譲るなら、自分がやりかけたことを途中で投げ出すべきではないし、むしろ「このオレを乗り越えていけ」とばかりに壁になって立ちはだかるべきだろう。現実世界ではテニスのフェデラーがほぼ36歳にしてグランドスラムの頂点に立った。野球のイチローは満身創痍となりながらもレジェンドとしての責務を果たし続けている。若手に更新を譲る美学もあるだろう。しかし自分が脇へよけてあげて本道ではない。そういう意味でこの映画は、間違った価値観を子どもたちに植え付けかねない。だって「才能ある後輩が現れたら、道を譲って自分は新しい夢を探しなさい。つまり夢をあきらめなさい」って言っているわけだから。
本当に本当に、この映画にはがっかりした。失望しかない。誰かこのレビューを英訳して、ジョンラセターに送り付けてくれ。
追伸:ジョンラセターはいったん監督業から身を引いていたのに、また監督に復帰するらしいね。カーズ3のストーリーとは矛盾するけれど、彼は自己矛盾についてはどう説明しているのかな。