劇場公開日 2016年12月3日

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「今の、京都。」古都 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5今の、京都。

2016年12月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作はあらすじを知っている程度。この映画は、原作の続編のスタンスだという。それが良かった。原作をなぞれば時代にあわないもの(ある意味、時代劇)になっていた。この映画は、現代の京都(風景も伝統工芸も京都で生きてる人々も)を上手く映し出していたように思えた。
今の日本は、ブラックギルやセイタカアワダチソウが我が物顔の自然界のように、伝統も美意識も食文化も外来のものが幅を利かせている。それを悪だとは言い切れないが、少なくとも、忘れてはいけないものを忘れようとしていることに、気付いていない。
そのことをこの映画は、監督の持つ「外にいた人間の眼」で教えてくれようとしている。

婿役の井原剛志が「ほんまもんに囲まれて、眼だけは肥えている」と京都人を評する。まさに、門前の小僧。だからこそ、そこで育ったものは、意志があるなら家業を継ぐ資格があるのだと思う。
松雪の見せる憂い、橋本の見せる葛藤、成海の見せる挫折、じつにいい。それらを乗り越えることでたどり着けるなにかに、橋本と成海の二人が行き着き、運命のごとくようやく出会った、そんなラストが良かった。
てことは、続編があるのか?

(ただし、背景に移りこんだ大型クレーンは、人物かお墓で隠せなかったのか?という不満はあった)

栗太郎