屋根裏の散歩者のレビュー・感想・評価
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乱歩のエロティックスリラー
明智小五郎の妻が引き受けた浮気調査は当たりだったが、二人の住むアパートには、屋根裏、というか天井裏から他人の部屋を覗く男がいた。
有名な話でエロティックさは製作の腕の見せ所。
『D坂の殺人事件』の続編!
同じ舞台、同じ設定なので『D坂』と続けて観るとわかりやすい。今作の郷田三郎は原作でも同じ名前であるため、D坂の方がむしろ改変されて同一人物にしたのであろう。さらにこの郷田キャラに不気味な性的嗜好を加え、とにかく横恋慕することが好きで、SMやら覗きばかりに走ってしまうというもの。D坂でも屋根裏から覗くシーンがあったのだが、今作を意識しての予告みたいな位置だったのだろう。
アパートの住人たちからも変人扱いされ、歯科医助手の遠藤からも「女を作れ」と嫌味を言われ、大内照子が引っ越してきてからは遠藤との関係に気づき、いつか殺してやろうと密かに企むのだった。屋根の節穴から唾を落とすシーンなどは狂気にしか見えなかった。そして、仲も良くないのに一緒に酒を飲んで、モルヒネという殺しの手段を本人から聞き出す郷田だった。
明智とはD坂の物語で悦子を奪われたという因縁が、今度はしくじらないぞと完全にライバル視している。そして、照子を悦子にダブらせてしまい、自分自身も倒錯の世界に入ってしまったかの様子。不気味な演技はなかなか良かった。
ACK探偵事務所というハイカラさは健在。遠藤自身も婚約者に対しては性的不能であることがコンプレックスだったという設定も面白い。大正の古めかしいセットで完全に官能ドラマとして成り立たせている作品。短編を繋ぎ合わせた大胆さが良かった。
女性陣が抜群に良かった!!
吹越満や津田寛治、郷田役で窪田正孝が出て来そうな雰囲気です。漫画やアニメの実写化に味を占めてしまった邦画界では、古典に依拠するのは知恵を使っていて、より映画らしい映画だと思います。愛憎劇は上手く撮れていたと思いますが、後半は捕まるまで消化するだけなので続きが気になるとかもなくなり、もう一工夫欲しかったです。明智の役者さんがただのサラリーマンみたいで、後半の明智のシーンは安い再現ドラマみたいになっていると思います。鋭い眼光と言うのは難しいでしょうが、せめて声が渋ければ良かったです。また郷田のキャラが薄く、ただの不遇な人という印象でした。間宮さんと木嶋さんは単に脱いだからという訳ではなく、それぞれ強く振舞ったり惨めな女に見えたり抜群の存在感があり、他の人では替えが利かなかったと思います。また女性ばかり脱ぎますよ!と注目されますが、ベッドシーンのない男性キャストもリビドーに溢れていないとエロティックサスペンスは成立しないと思いますし、男性のみならず女性から観ても楽しい映画なのかは微妙な所だと思います。
どろどろ
ある男がある女を振り回し、また別のある女が別のある男を振り回し、「好き」という感情が生み出すよこしまな感情が上手く表現されていると思います。
江戸川乱歩作品ということで推理の部分の描写も期待しましたが、この映画に関してはそれはついでのような気がしました。逆に木嶋のりこさん、間宮夕貴さんが演じた役柄は原作では登場していないとのことですので、原作ではどのように描かれているのか読んでみたくなりました。
メイキングも観ましたが、監督の1シーンに対するこだわりも強く、プロが創る作品だなと感じました。
最後に個人的ではありますが、話題となっていた性交のシーンについては、僕個人としては例え演技だとしても木嶋のりこさんにはもっと優しくしてあげたいと思いました。笑
映画オリジナルのヒロイン2人が素晴らしい
江戸川乱歩の原作はシンプルな短編ですが、今作はそれにオリジナルの2人のヒロインを加えたことで、より華やかでエロティックな作品になっていると思います。
対照的な2人のヒロインのキャラクターが織りなすエロティックな三角関係を軸に変態性欲者たちの蠢くミステリアスなストーリーが展開します。
エロスを前面に押し出しながら、乱歩の世界をサイコホラー風に再構築してるところが面白いです。
抑えた色調と静かな大正時代の佇まいがいいかんじ。
しいていえば屋根裏で息を潜めて覗き見る背徳感をもっと感じさせてくれたら最高だったかなと思います。
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