「3人の命を救ったイヴォ爺さんに乾杯」みかんの丘 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
3人の命を救ったイヴォ爺さんに乾杯
アブハジア紛争化、みかん農家のマルガスとみかんの木箱作りのイヴォは、周りの多くが戦争の激化によって帰国するなか、この土地に残っていた。
そんなある日、マルガスの家の前でちょっとした戦闘が起き、イヴォとマルガスはチェチェン兵のアハメドと敵対するジョージア兵のニカを介抱する。
はじめは殺意を持って、どちらかが今にも殺しかねない緊迫した様子だったのだが…
静かな映画だからこそ、銃声や爆発音などの戦争音が際立っていて、みかん畑の広がるゆったりと自然豊かなこの地に、戦争がやってきているという緊迫感がよく伝わってきました。
島国に住んでいる自分には正直、人種や宗教による人々の殺し合いに発展するまでの対立は分からないけれど、文化としての違いはあれ、人としては皆何も“違わない”。
はじめは国のために、友の仇、と強い殺意を持って接していたものの、徐々に心を通わせていく様子は、おおよその展開が分かったとしても心に響くものがありました。
そもそも殺しは良くないし、人の死が絡んでくるところでポジティブになってはいけないかもしれないけれど、最後の共闘シーンは敵だとか味方だとか関係なく戦っていて、嬉しかった。その分悲しかった。
戦場では攻撃対象としてしか見ていないけれど、話してみると相手も自分と同じ、人間としての仲間だと分かる。
自分の殺意って、なんてちっぽけなものだったんだろうって思うはず。
これは戦争だけでなく、相手を理解するということでは日々の生活にも当てはまる。
永遠の別れと希望のある別れ。
なんとも悲しいラストでしたが、あの4人が天国で再開できることを願って。
みかんの丘には夢半ば亡くなっていった者の魂が埋まっている。
そんな彼らの魂のこもったみかん。
この映画にとって、平和の象徴はハトじゃなくてみかんですな。