劇場公開日 2017年9月16日

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「これは、いったい誰を共感しろといいたいのか…」奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5これは、いったい誰を共感しろといいたいのか…

2024年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

原作のマンガも軽く読ませていただきました。さわりだけね。驚くほどにそのまんま。妻夫木君の演技力も大したものですね。コミックの主人公になりきって、ちゃんとその場の空気を表現できている。

自分語り風に日常で起きたことを描いているので、どうしたって主人公の頼りない編集者に共感するしかないと思うのだが、惚れた女が仕事で揉めて、納まったと思ったら、メシに行くってどういう流れだ?(原作通りだけど)

しかも、その場で彼氏のDVを告白されたきっかけに、爆発的に付き合ってくれと迫り、あっという間に肉体関係。ずいぶん軽い女だこと。彼氏がいるのに、ノリで誰とでも寝る女が、「男を狂わせる」というのか。(これも原作のまま)

話が進むにつれ、出てくる人がことごとく絵空事のような薄っぺらい人物描写で、特に仕事に対するスタンスがどいつもこいつもオカシイ。笑えるという意味ではない。不思議で、不誠実で、非生産的で、不快だ。

私なら、こんな女一晩でもムリだ。別に水原希子がムリと言っているのではない。始めから天秤にかけられている状況で、浮かれている状況がムリだ。

持てるパワーをつぎ込んで、あらゆる角度から狂わせガールの魅力を見せようと努力しているが、同じようなエピソードの繰り返しになっていて、中盤、かなりダレる。肝心の男と女の精神的な結びつきがまったく描かれていない。どうして二人は惹かれ合うのか、何の理由もない。ただ、目の前にいただけの人だからとしか思えない。猿みたいに発情しているだけなのか。

お話しが進むと、狂わせガールのトンデモ奔放ぶりが露呈していくが、これも彼女の魅力のひとつなのか。男なら誰もが彼女に惚れ、自分のものにしようと悪戦苦闘し、周りが見えなくなる。これが、才能とでもいうのか。職場の人間関係大事だし、どんだけ身内とやりまくってんだよと、あきれることはあっても、惚れることはない。まともな判断力の持ち主なら、仕事のパートナーには成り得ないと分かるはずだ。それとも、そんな誰とでもつながっているような状況で、出来るほど、雑誌編集ってぬるい仕事なのだろうか?

ラスト、3年後の落ち着いたコーロキの姿に、「絶対嘘だ」と違和感を抱くのは私だけか。あんな仕事のスタンスで、ここまでの成功は手にできるはずもない。3年で、雑誌編集から、変名を使って、イベントアドバイザリーやコンサルティングにまで手を広げている。それでも立ち食いそばが美味いと言える質素な男は確かに魅力的だろうが、これだけ手を広げていて、価値観が乏しすぎる。

そば屋のカウンター越しに昔の自分を見て、まぶしさと悲しさに襲われ、町で偶然見かけたその後の狂わせガールには声もかけず、眉一つ動かさない。

この映画の価値観には、何ひとつ共感できない。

うそつきかもめ