間諜最後の日のレビュー・感想・評価
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間諜とはスパイのことです。
1936年、イギリス時代のヒッチコック監督作品です。
原作はサマセット・モームの短編。
驚いたことにサマセット・モームは第一次世界大中からイギリス軍の諜報機関に
所属する列記とした諜報部員だったそうです。
この映画の主人公は陸軍大尉のブロディ(ジョン・ギール・グッド)は、アシェンデンの別名を持つスパイ。
アシェンデンの妻を装う女スパイがエルザ(マデリーン・キャロル)
同僚の将軍と呼ばれるスパイがピーター・ローレ。
この3人が主な登場人物です。
スパイ映画なので、ドイツ人スパイの暗殺場面もあります。
しかしそれがなんと人違い・・・と言う傍迷惑な話し。
(作家でスパイのプロデイはサマセット・モーム自身がモデルと思われます。)
偽装妻のエルザがブロディに本気の恋をしたり、
人違い殺人に心を痛めて傷ついたり、と、とてもプロフェッショナルなスパイとは
思えないので、イギリス諜報機関もまだまだ緩かったのかなあ・・・と、ちょっと思いました。
そして語らなければならないのは、この映画の狂言回し役のようなスパイ。
将軍と言う役名のピーター・ローレ。
黒髪のメキシコ人役、しかもこの役の時32歳だそうで、生きの良い溌剌とした演技で、
とても印象的です。
冗談ばかり飛ばして女を口説きまくる姿と、冷酷に暗殺する二面性をいとも容易く演じていて
流石に性格俳優でいつも印象深い脇役の名手ですね。
王道のサスペンス映画というより、恋に落ちた女スパイ・エルザの、揺れ動く心理と、
悪気はないのですが、男から男へ心変わりする姿が、よく言えば人間的、
悪く言えば「男をたぶらかす罪な女」
でも、だからこそ、この映画が面白い恋の駆け引き=ロマンティック・コメディ的なのですね。
爆撃シーンもあり、ラストの落ちにも驚かされますが、
サスペンス映画というより、
人間ドラマ寄りの異色のヒッチコック作品でした。
舞台は第一次大戦時も、大戦前夜に思える英独の暗闘
妻役英国スパイのマデリーン・キャロルが、圧倒的美しさとスパイに憧れるキャラクター設定で、とても魅力的。相棒役のピーターローレが、手品でナンパするコミカルさと凄腕の共存で、良い味を出していた。そして、ターゲットを間違えて殺してしまうというストーリー展開もサマセット・モーム原作ということだが、秀逸。主人の死を感じ取った様に見えるダックスフンドの一途な動きがとても印象的。
誠実そうであった紳士で実は真の敵であった独国スパイのロバートヤングの表情及び態度の変化はお見事。列車の中に乗り込む独兵士達の不気味さと全体主義的動きは、まさにナチスそのもの。列車は英国飛行機により狙撃を受けて、独国スパイは死に絶え、そこにはコミカルさは影を潜め、まさに戦争状態。1938年、舞台設定は異なるものの、まさに第二大戦前夜を感じさせた。
とは言え最後、ヒーローとヒロインはスパイを引退してめでたく結婚とのオチは暖かく、全体的な印象をかなり和ませてくれた。
ヒッチコック監督の玉石混交のイギリス映画
主演のジョン・ギールグッドが若い。マデリーン・キャロル、ピーター・ローレと役者は充実しているが、脚本が未完のレベル。第一次世界大戦のアラブにおけるイギリスの支配力を扱うスパイ映画だけに、舞台がロンドン、スイス、トルコと移動するが、映画のスケールにはなっていない。ヒッチコック監督らしさは、教会の死体が握っていたボタンが、カジノのルーレットのチップの代替で扱われるシークエンス。ラストの襲撃を受けて転覆する列車から主人公らが助かり、偶然にもドイツ側のスパイが下敷きになるのは、結末として安易すぎる。
007の原型は戦前にヒッチコックが作っていた
イアン・フレミングの小説が007シリーズの原作であるが、それは戦後のこと
本作は戦前にほぼ同じ構造の娯楽映画を撮っていることに驚く
死んだことになっている二枚目の秘密情報部員
彼に指令を出す英文字一文字の部長
彼に協力する美女は敵の誘惑を受ける
外国を舞台に豪華ホテルの華やかなカジノにタキシードで繰り出す主人公
観光地のスイスアルプスのシーンやクライマックスはコンスタンチノーブル行きの国際列車のシーンが展開される
ヒッチコック流のユーモアとウイットは主人公の相棒の将軍が受け持っている
しかしヒッチコックは一捻りを加えている
軽口を叩きながら女と見れば誰でも盛んに口説く
つまり主人公とこの将軍を一人に合体させた人物がジェームス・ボンドなのだ
その将軍、実は右側の耳にだけピアスをしている
つまり彼はゲイという設定なのだ
口説いていてもそれはスパイの仕事で本気ではないということ
ヒッチコックらしい捻りを加えている
そして騒音の中で台詞が聞こえずともお話が成立して行くシーンを何度も使う試みは、ヒッチコックの後年の作品でも使われる手法だ
スリルとサスペンスの切れ味は今一つ
ヒロインとのメロドラマでまとめてあるのは勿体ない
とはいえヒッチコックらしさは十分に感じられる作品だ
しかし本作のポイントは何と言ってもピーター・ローレの怪演だ
ラング監督の名作Mでの殺人鬼とはうって変わった陽気な様子は記憶にいつまでも残るものだ
感服しました
これは、なかなか好きな作品でしたね。やっぱり一番特筆すべきは、ピーター・ローレですかね。独特の存在感があって、スッとナイフを忍ばせるところとか、異常さをやっぱり感じてしまいますね。ラングの『M』の彼を思い起こさせます。
また、群衆の撮り方がやっぱりヒッチコックはうまいですよ。群衆の押し寄せる混乱、今回は工場でしたね。劇場だったり色々ですが、工場という設定もなかなか良かったです。
いやぁ、この作品は、ヒッチコックの中でも結構、好きかもです、私。
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