アスファルトのレビュー・感想・評価
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コンクリートに染み渡る、おかしみと孤独と温かさ。
フランスのとある町に佇む公団住宅。ムダな要素をほとんど排除したこのミニマルな空間は、空っぽすぎてある意味、時代を超越したSF世界のようだ。住民たちも互いに没交渉で、とてもじゃないが強い絆で繋がっているように見えない・・・。なんだか今まさに世界中で起こりつつある社会の分断を投影しているような舞台設定、そして6人の(群像劇の)主人公たち。一方、エレベーターだけはマイペースに上下運動を繰り返し、人や物を運んだり、運ばなかったりするという、これまた巧みな物語上の仕掛けが観る者の心を惹きつけてやまない。アスファルトと言うより「コンクリート」。どこかひんやりとした触感が伝わりつつも、決して悲観的にならず、仄かなおかしみを込めて「誰かと繋がりたい」という思いを一筋の陽光のように差し込ませる。世の中に足し算の演出がはびこる中、引き算を使って全体を制御し、観客に様々な思いを想起させるこのベンシェトリ監督の才能に感銘を受けた。今後が楽しみな逸材だ。
映画はおひとり様にも優しい。
冒頭、団地の住民の寄り合いのシーンが乾いたコントのようで、ロイ・アンダーソンを思い出した。が、アンダーソンのように人間の存在そのものを俯瞰するような作風ではなく、登場人物ひとりひとりの傍らでさりげなく微笑んでくれるような映画だった。
主な登場人物は6人。ちょっとヒネクレ者の映画女優を演じたイザベル・ユペールは63歳という概念を覆すキュートさであり、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキの本当に社会の日蔭に潜んでそうな佇まいがリアルであり、仏頂面の宇宙飛行士を演じたマイケル・ピットは同性から見ても可愛らしい。
実生活で知り合ったら面倒臭そうだが、嫌いになれない人たちのほのかな交流が絶妙なセンスで綴られていく。フランスでは実はダサいコメディが人気だと知っているが、こういう作品を観るとフランス映画への憧れってなくならないなと思う。そして独り客を温かい気持ちにさせてくれるなんとも優しい映画である。
大人の寓話!流石のイザベル力
ほんのちょっぴりスパイスの効いたフランス映画らしい大人の寓話
外観は今にも壊れそうに観えるボロアパートなのに
それぞれの室内は結構広くて綺麗で素敵なのに驚いた。
その辺が、日本の団地ものと比べて貧乏臭く見えない要素かな〜。
ポスターにもなってるイザベル・ユペールと青年の話は
流石のイザベル・ユペールがいい味出してて面白かったし
宇宙飛行士とアラブ系移民の人の良いお母さんのとの話も良い。
アメリカの象徴のNASAの宇宙飛行士とアラブ系の移民のお母さん。
運命次第では
もしかしたら殺し殺される関係になっていたかもしれない2人が
親子の情と言う根源なものによって互いを思い合う様がホロリとさせる。
と、ここまで書いて、実は映画冒頭に出て来る
エレベーター男だけは最後まで、納得いかなかった!
我がままなのはまあ、そう言う人もいるだろうと納得。
でも、あのムサいボサボサ頭の男に
なんであの看護婦さんは付き合っているんだろう??
最初は患者さんと間違えるのは解る。
その後、私には最後まで怪しいおっさんとしか見えなかった。
頑張って看護婦さんに合いに行くシーンも、結局は自分のためだけに思える。
せめてラストにアパートのために何かをするシーンとかがあればな〜〜
この感触の映画大好き
オフビート群像劇好きなので、かなり好みの映画だった。
ウェットすぎず、暖かすぎず、でも優しい風合いが最高。
イザベル・ユペール可愛いすぎる。これで60オーバーとか憧れる。
アスファルトの塊のマンション、病院、刑務所の中での孤独な人間同士の細やかな触れ合いが温かすぎず冷たすぎず平熱な感じで描かれている。
マイケル・ピットはフランスに来るアメリカ人の役なのがドリーマーズを思い出したけど、マイケル・ピットだけ不時着してきた宇宙飛行士っていう日常感0な役で笑ってしまうが、それもまたよかった。
看護師役のブレニアさんも、絶妙にくたびれ雰囲気と
素朴な美しさが同居する立ち姿が素晴らしかった。
配信で鑑賞
【ボロッチィ団地に住む3人の男女が出会った3人の男女との関係性の変遷をユーモアと切なさを塗して描いた群像劇。アキ・カウリスマキ監督もしくはエリア・フレイマン監督風味が感じられる作品です。】
ー 冒頭、ボロッチィ団地の頻繁に止まるエレベーターの改修について、住民同士で話し合うシーンから物語は始まる。
2Fに住む、髭ずらの冴えない太った男だけが反対するが、多数決で改修が決まる。-
<Caution! 内容に思いっきり、触れています。>
1.髭ずらの冴えない太った男が、健康器具を漕ぎ過ぎて両足を怪我して病院へ入院。そして、車椅子での移動を余儀なくされる。
彼は、病院内で自販機から食べ物を買おうとするも、一個だけ引っ掛かって出て来ない。(クスクス。)
更に、彼は家に戻った際に、エレベーターに乗らないと部屋に帰れないため、コッソリとエレベーターを使うが、ある日閉じこめられる・・。(クスクス。)
そして、彼は夜勤の女性看護師と出会い、彼女の写真を撮りたいと申し出る。
ー 恥ずかし気な彼女は、その申し出を受け入れるのである。孤独だった二人の恋の予感である。-
2.落ち目の女優(ナント!イザベル・ユペール)が母と住む少年の向かいの家に越してくる。女優は少年の友人に扉を開けて貰ったりするうちに、部屋を行き来するようになる。
そして、二人はその女優が売れていた頃の白黒映画を観るのである。
少年の言葉。”この映画、良いね。”
落ち目の女優は且つて自身が出ていた舞台に再応募するが、監督に会っても貰えない。
少年は、”90歳の老婆の役が良いよ”。”と言ってプロモーションビデオを撮ってあげるのである。女優が、少年が映すカメラに語りかける台詞が、いつも一人の少年の心に響くのである。
3.団地の屋上にはNASAのカプセルが不時着し(クスクス。)、中から飛行士が困惑した表情で出てくる。
飛行士は、団地に住む、年老いたアラブ系の女性の世話になる。
NASAからは”事情があるから二日待て!。お前の代わりの人間を着陸させてから迎えに行く”と言う訳の分からない連絡が。
飛行士は、優しい老婆をフランス語と英語で珍妙な会話をするが、何故か通じる。
老婆には留置場に息子が居るのだが、それ故に老婆は飛行士に優しい。
老婆お得意のクスクスを二人で食べるシーンが良い。
<今作は、ボロッチィ団地に住む3人の男女が、3人の男女と不思議な出会いをしつつ、関係性を築いていく様を、ペーソスな笑いと切なさとシュールさをブレンドさせつつ描いた作品である。
アキ・カウリスマキ監督もしくはエリア・フレイマン監督風味が感じられる作品であり、とても印象的な作品である。
劇中、屡聞こえる鳴き声の様な音は、ボロッチイ団地が発する音ではないかな、と思った作品でもある。>
後味良し
街の片隅で生まれた不器用だけどハートウォーミングな交流が描かれていて、雰囲気はホントにカウリスマキでロイアンダーソン。
独創性はないけど、適度な緊張感と安心感を保ちながら気持ちよく見られる。
メインの6人の役者が絶妙に個性的なルックスをしていて、みんな役にピッタリで凄い。
郊外(バンリュー)団地の今
郊外の荒びれた公団住宅の住人たち、冴えない中年男は看護師の気を惹こうと必死、同じ階の隣人の老女優と快活な青年は世代ギャップを越えられるか、迷子の宇宙飛行士と健気に世話するアラブ系移民の老婦人の3つの偶然の出会いの物語を描いている。
劇中でピカソ団地と言っていたがタワーが無かったので別の団地でしょう、1960年代に移民用に多くの団地が作られたが1980年代以降、失業率が増加し非行化が進む移民2、3世の少年達によって犯罪が増加、団地はフランス社会から貧困で危険な地域だと見られるようになった。映画『憎しみ』(1995年)はそんな青年たちの暴動を描き社会問題にもなった。それに比べれば本作の団地は老朽化が進んだせいか穏やかに思える。
貧しく恵まれなくとも健気に生きる人たちのヒューマンコメディと言ったところなのだろうが、ルームサイクルの漕ぎ過ぎで入院とか、NASAの宇宙船のカプセルが屋上に不時着とか突飛すぎるでしょう、もっともフランス人はアメリカ人を虚仮にするのが大好きのようだから受けるプロットなのでしょう。いい年をして平気で嘘をつき、気を惹こうとする様は痛々しい。かっての栄光を忘れられない老女優というのもよくある話、いずれも取り立てて映画にするまでもないフィクション感が強く登場人物にも思い入れが出来かね、正直退屈な映画でした。
人の温もり。
古い団地の住人3パターンのstory。それぞれの人との関わりが同時進行で進んでいく。写真家と偽る男と看護師。元女優と青年。NASAの青年と老婆の物語。会話が淡々としていてムダな台詞もなく映像も分かりやすい。人との優しさを感じる。
アスファルトの冷たさと対象的に人との温もりが感じられる作品でした。ちょっと不思議な感覚の映画です。
奇跡
出会いの初めは手探りだけど、段々と相手を理解し相手の役に立ちたくなる。人との出会いって、奇跡的で素敵なこと。世界でももちろん日本でも世代や国籍や経済的に数えきれない分断があるけれど、そんな事をふと忘れてしまうくらいに優しい作品でした。
団地のエレベーターが壊れたので、住民が費用を分担して修理すること...
団地のエレベーターが壊れたので、住民が費用を分担して修理することになった。しかし、2階に住む自称写真家のスタンコヴィッチ(ギュスタヴ・ケルヴェン)はエレベーターは使わないからと断固拒否。しかし、直後にトレーニングマシンでケガをして車いす生活になった。誰にも見つからないように食料調達に出かけるために、住民が何時に利用するかをメモしておいて、ようやく夜中に出かけるのだが、コンビニが近くにないのか、病院の自販機に向かう。そこで知り合った看護師(テデスキ)に心惹かれたスタンコヴィッチ。毎晩通って、写真を撮りたいと申し出る。
母親がいつも留守にしている、学生のシャルリ(ベンシェトリ)。同じ階の隣に中年女性が引っ越してくる。名前はジャンヌ・メイヤー(ユペール)という元女優だった。彼女が舞台劇に復帰しようとするのを助けたいと願うシャルリだったが・・・
団地の屋上にNASAの宇宙飛行士ジョン・マッケンジー(マイケル・ピット)を乗せたカプセルが不時着する。NASAの計算手違いが起こったためで、極秘裏に救出に向かわせるのだが、代わりのカプセルを飛ばすために2日間、アラブ系住人マダム・ハミダ(タサディット・マンディ)の世話になることになった。
一番面白いのはスタンコヴィッチ氏。エレベーターを使わないと約束させられたのに、車椅子では階段は無理。不器用ながらも看護師に接近しようとするところがいい。全体的にほんのり温かくなるコメディだ。
なんだかなー。
群像劇と思って期待して観たのですが。
イマイチ感情移入できず。なぜ宇宙飛行の脱出パラシュートが、団地に落ちてくるのか等、「???」なところが多すぎて。
そこを気にしちゃこの作品は成田高いんですけどね。
まあ宇宙飛行士と老いた母親の、言葉が通じないながらも、だんだん意思疎通していくのはほほえましかったです。
それくらいかな。ちょっと前衛的な作品でした。
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