「アップばっかり。」花戦さ mg599さんの映画レビュー(感想・評価)
アップばっかり。
日本映画久しぶりの本格時代劇なので、きっちり作ってほしかった。
篠原哲雄は時代劇が初めてというわけではなかったので、少し安心していたのだが、いろいろ大人の事情があったと推察される。
まずは、専好(野村萬斎)が信長(中井貴一)に呼ばれて花を活けに行くのだが、そのとき、各登場人物のテロップが出る。
「豊臣秀吉」と出たのだ。
信長の家臣のときに豊臣を名乗るはずもないので、これは間違いといってもいい。これで信頼度がガタッと下がる。
年代をテロップで出すのに、初めは西暦もカッコ書きで出していたのに、二つ目からはない、ということもあった。
いちばんの疑念は、市川猿之助はどれほどこの映画にスケジュールを割いたのか、ということである。
秀吉が利休(佐藤浩市)の顔を踏みつけるシーンがあるのだが、ふたりの全身が同時に映らない。そう思って見ると、茶室のシーンもほぼお互いに背中越しにしか映らない。秀吉が「この茶室はせまい」となげいても、それを映像で表さない。
あまり考えたくないが、この豪華キャストが一同に会して撮影が行われたことがないのではないか。
丁々発止の演技合戦も、アップのカットバックばかりでは興醒めである。
また、もしこれが篠原哲雄の演出というなら、もう映画は撮らなくていい。
「洗濯機は俺にまかせろ」の頃に戻ってほしい。
それでも、佐藤浩市は素晴らしい。
コメントする