「変幻自在の主題曲「PARK MUSIC」が変わっていく過程を楽しむ作品」PARKS パークス Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
変幻自在の主題曲「PARK MUSIC」が変わっていく過程を楽しむ作品
東京・中央線沿線に在住もしくは通学・通勤経験者ならば、必ずひとつやふたつの思い出がある"井の頭公園"。その"井の頭恩賜公園"の開園100周年記念映画である。なんだかそう聞くと、武蔵野市か三鷹市あたりの役所が作ったPR動画かと敬遠したくなる。
ところが実際は違う。観終わってから、じわじわとくる音楽映画だ。とくに主演の橋本愛が歌い、劇中で何度も流れる「PARK MUSIC」のサビが頭の中をぐるぐる廻る。
橋本愛の歌といえば「潮騒のメモリー」(あまちゃん/2013)のカバーくらいで新鮮ではあるが、もともとアイドルオーディション出身者だからそれなりに歌える。
面白いのは、アイテムとしてオープンリールテープが出てくる。吹き込まれていたのは、50年前に井の頭公園脇にあるアパートに住んでいた女性におくられたラブソングのひと節で、現代の主人公たちがその曲を完成させるという展開に至る。それが主題曲「PARK MUSIC」である。
間違いなく音楽映画の良し悪しのキモは楽曲である。この「PARK MUSIC」という楽曲が映画のキーになっていて、ストーリー進行と密接に絡み合いながら、楽曲自体も様々なアレンジが加わって変貌していく。プリズムのようにキラキラとスペクトラムを変えるのだ。
本作は、作品の音楽監修を担当したトクマルシューゴのプロデュース力に支えられている。印象的な主題歌の作曲だけでなく、吉祥寺ゆかりのアーティストを中心に、セレクトしたインディーズ系アーティストたちが20組以上、出演ないしは楽曲提供している。監督の瀬田なつきが書き下ろした脚本と、それにインスパイアされたトクマルシューゴ楽曲との奇跡のコラボレーションなのだ。
個人的にはほとんど知らないアーティストたちなのだが、テアトル新宿での本作公開イベントにライブ出演していた澤部渡(スカート)の歌声が魅力的だ。楽曲は60年代フォークロックの香りがする。ふとした瞬間に"はっぴいえんど"っぽさも感じる。なお、映画のサウンドトラックアルバムがTONOFONレーベルから発売された。
橋本愛主演で、共演は永野芽郁、染谷将太。永野芽郁は公開中の「ひるなかの流星」(2016)で主演している。彼女はティーンモデルとしては人気だが、決して主演女優としての華があるわけではない。しかし年相応の自然体の女の子がバツグンである。続けざまに出演本数が増えているので注目だ。
染谷将太は一時期の怒涛の出演から、最近はめっきり見なくなった。出演は瀬田監督つながりだろうが、本作では独特の歌声でラップを披露する。そういえば橋本愛×染谷将太共演って…。あっ「寄生獣」だ!
(2017/4/25/テアトル新宿/シネスコ)