劇場公開日 2016年12月10日

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「憧れの対象を目の前にしての、トリュフォーの高揚感がひしひしと伝わってくる一作」ヒッチコック/トリュフォー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 憧れの対象を目の前にしての、トリュフォーの高揚感がひしひしと伝わってくる一作

2025年8月18日
PCから投稿

映画を志す人たちの教科書、というか聖典と言っても良いほどの名著、『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』を著すにあたって、フランスの映画監督フランソワ・トリュフォーが「サスペンスの帝王」アルフレッド・ヒッチコックに行ったロング・インタビュー映像が本作の核となっています。

さらに多くの映画監督らがヒッチコックが映画の発展に寄与したのか語っています。ウェス・アンダーソンは風貌からして作風そのまんまなところとか、監督たちの証言にも多くの見どころ、聴きどころがあるんだけど、ヒッチコックという憧れと畏敬の対象を目の前にしたトリュフォーの高揚と緊張に満ちた表情がほぼすべての印象をさらっていった感があります。

彼自身もフランス映画界におけるヌーベルバーグ運動の旗手として世界的な映画作家であるにも関わらず、まるで無垢な少年のようにヒッチコックに語り掛けていきます。それを受けるヒッチコックも、年齢の離れた同士を得た喜びが伝わってきます。

『映画術』だけでなく本作も、映画の道を志す人たちに夢と希望を与えてくれる作品でした。ヒッチコックとトリュフォーの姿は、どこかで映画を通じて、心から分かり合える人と出会えるかも知れない、という可能性を示してくれている訳ですから。

このインタビュー以降もヒッチコックとトリュフォーの交流が続いていたことも感動的だったけど、ヒッチコックが亡くなってほどなくして、トリュフォーもまた52歳という若さで亡くなったことに思い至り、「ヒッチコックの正統的な後継者」としてもっと作品を作りたかっただろうな、と思わずにはいられないのでした。

yui
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