「悲しくて苦しいんだけど、それでも生きているのは幸福と感じる作品」LION ライオン 25年目のただいま ポップコーン男さんの映画レビュー(感想・評価)
悲しくて苦しいんだけど、それでも生きているのは幸福と感じる作品
今では誰もが使っているといっても良いグーグルアース。
それを使って自分の家族に会いに行った青年の実話を題材にした作品。
初めはピンとこなかった、「自分の故郷がわからないってどんなシチュエーションよ?」と思っていたがストーリーを追っていくと日本とインドでは全く違う文化であったり状況が浮き出てくる。
主人公サルーはスラムで生活している少年、毎日の食事を兄と石炭を盗んだりして生活をしている。
この設定だけでも日本ではまずイメージできないだろう、役所に行って生活保護の申請をすればまずスムーズに食事にはありつけるだろうしね。
そのサルーが兄と一緒に夜中に仕事に出て、一人で乗ってしまう回送列車。
数日走り続けて1600キロも離れた場所に行ってしまうw
マジで想像できないしw調べるとインドの面積は日本の9倍近くあるらしい。そりゃ迷子にもなるわw
その後インドでは平気にある人さらいや人身売買等をかいくぐり、無事に(?)孤児院に。
そこからラッキーな事に裕福な夫婦に引き取られオーストラリアに。
もうね、サルーの子役の子が非常にかわいくて、目がクリクリで、「グドゥ(兄ちゃん)」って声もかわいらしいのよw
だから一つ一つをドキドキしながら観ていたw
そして突然大きくなってデヴ・パテル登場。何か見たことあるな、と思ったら『マリーゴールド・ホテル』の兄ちゃんじゃんww
コメディも良かったけど、今作も良い演技するんです。
ルーニー・マーラも『キャロル』とは違った今風の感じで良かったなー。
最近は本当によく見るニコール・キッドマンは養母役を非常に素晴らしく演じていた。実際にも養子を取ったりと良いお母さんなんでしょう。
ニコールの演じたスーさんですが、本当に頭が下がります。自分たちは特に不妊な訳でもないが、あえて子供は作らず一人でも世界で不幸な子供たちを救いたい。
と。
たぶん、不幸な子供たちを救いたいのは誰しもが思っている事ではあるが、それを行動に移せる人間がどれだけいるのだろうか?
本当にそのセリフを聞いた時には涙が止まらなかった。
母親と子供の間では(もちろん父親もあるだろうが、、)無償の愛と言うものがあり、義理の親子の関係では簡単な物ではないだろうし、血のつながりが無いために非常に脆い物でもあるかもしれない。しかしながらそれを補う程の愛情がこの親子にはあった。
・・・・ここからはしっかりネタバレ・・・・
もちろんグーグルアースで故郷を見つけることが出来るのだが、家族に対する愛がそれを可能にさせている様な描写は非常に良かったし、何よりもゆっくりと丁寧にそれを描いているのがとても感動した。
何より実の母がいつまでも帰りを信じ、一度も引っ越しをしなかったと言うフレーズに涙が止まらなかったし、人を愛する大切さや生きている幸福感を感じた。
最後のエンドロール後に兄とのシーンが描かれるが、作り手の本当に想いの詰まった非常に良い作品だと感じた。
タイトルも非常に良い。名前と言うのは親が子供に与える愛のこもった大切なプレゼントだから。
映画の後に調べたが2005年にグーグルアースがスタートしたらしい。
人間は便利な物を作り、たぶん少しでも幸福になろうとしているのだろうが、犯罪に使ったり、人を不幸にする方に色々な物が使われている。
しかし今回はこの素晴らしい発明でいくつもの人の幸せを繋ぐ事ができたのは開発者も喜んでいるかもしれない。
またこんな映画に出会うために映画館に通っているんだなと思う。